鳥栖市に計画されている次期広域ごみ処理施設建設予定地の洪水時の浸水想定が、ハザードマップ(マップ)の見直しで最深1メートル未満から5メートル未満に変更されたのを受けて、市民や市議会から適地か検証するよう求める声が上がっている。市や、建設する佐賀県東部環境施設組合はその声に応えるべきである。

 市のこれまでの議会答弁や住民への説明で疑問に思えたことを2点挙げてみたい。11月の市議会全員協議会から拾ってみる。

 一つは、国が2016年に浸水想定を従来の0・5~1メートル未満から3~5メートル未満に大幅に見直したのを受けて、議員が「本当にこのまま進めていいか、再検討してみたか」と質問した場面である。

 市は「候補地選定後に課題が生じればそれに対応する。最初から(選定を)やり直すことは考えていない」と答えた。

 議員は「見直して、やはり予定地が最適、という客観的な根拠がないと市民の不安は解消されない」と批判した。市が言う、選定後の「課題」には、予定地からの有害物質検出も含まれている。

 もう一つは、14年に候補地を選んだ際の選定基準をめぐるやりとりである。市は「当時のマップで最深だった2メートル以上の浸水想定地区を除外して選んだ」とした上でこう述べる。「今回、見直されたマップでは5メートル以上が最深。予定地についても5メートル以上を除外して評価することになる」

 ちょっと分かりにくいが、こういうことである。当時、候補地はマップで最深だった2メートル以上の場所を除外して選んだ。見直されて最深が5メートル以上になり、予定地も3~5メートル未満と深くなった。しかし、選定時同様に最深ではないから、このまま進めても問題ない、と言っているのである。

 これに対し議員はあきれ顔でこう切り返す。「そうなると、最深が今後10メートル以上になったら、10メートルまでは造って良いということになる。そんな馬鹿な話はない」

 その後も、市側は「浸水想定が変わったということで取り立てて議論したことはない」と明かしながら、施設の強靱(きょうじん)化を図るので大丈夫だと主張する。強引としか思えない、理屈を繰り返すのである。

 市民が全国で「想定外」の災害が頻発しているのを目の当たりにして不安を訴えているのに、検討さえしないというのはどういうことだろう。11月末の住民説明会では東部組合が他県の事例を紹介し、一部理解を示す声が出たものの、まだ不十分で分かりにくい。

 専門家は「新たな災害の時代に入った」と警鐘を鳴らす。台風19号で被災した福島県や長野県では「浸水地域はマップの想定とほぼ一致した」とも報道されている。

 市や組合は想定されている最大規模の雨が降って河川が氾濫した場合、どのような状況が想定され、どのようにして被害を軽減するのか、シミュレーションを見せることはできないか。議会はチェック役として、それで大丈夫なのか、防災の専門家を呼んで尋ねてみてはどうか。現計画を専門家の目を通して検証してみるのである。

 施設は来年度着工し24年4月開業を目指している。完成後30年間の運営費を含めた総事業費は416億円に上る。着工していない今だからこそ、十分に議論を尽くしておくべきである。(高井誠)

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