つらい気持ちになった。凶弾に倒れた医師中村哲さんの棺ひつぎである。アフガニスタンのガニ大統領自ら先頭で担いでいたが、日本に到着した時の政府関係者は外務副大臣ら数人が出迎えただけだったからだ。この差はどこからくるのだろうか◆無言の帰国。ニュースを見ようとNHKにすると臨時国会閉幕を受けて記者会見する安倍晋三首相が映し出されていた。2カ月余りの会期で不祥事や疑念が続出し、その説明をする機会だったろうが、明確な回答はないまま。延々と続く中継に正直、辟易へきえきした◆会見で彼はこんなことを言っていた。「国のかたちに関わる大改革に挑戦し、新たな国造りを力強く進めていく」「必ずや私の手で成し遂げたい」。都合の悪いデータは出し渋り、詭弁きべんを弄して逃げ回る。国会軽視ともいえる政権のトップが強調する「新たな国」とはどんな姿なのか◆この日、政府の2020年度予算案の一般会計総額が100兆円を超えて過去最大を更新すると報じられた。「桜を見る会」のようなお金の使い方をしていては財政再建などできるはずもない。消費税を上げても、歳出拡大が止まらないようでは将来に負担を強いるだけだ◆ことに防衛費は8年連続で増え最大を更新する。「平和に武器はいらない」。中村さんのアフガンでの活動を支えた信念に思いをはせたい。(丸)

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