警察庁は道交法改正により、あおり運転を定義し、新たに罰則を設ける方針を固めた。違反点数も15点以上にして、違反1回で即、免許取り消しとする考えだ。これから細部を詰め、年明けの通常国会で関連法案提出を目指す。法務省も自動車運転処罰法で車の前に割り込み、停車させる行為を危険運転に問えるよう改正を検討している。

 東名高速道路で2017年6月、進路妨害により無理やり停車させられ、後続の大型トラックに追突された車の夫婦が死亡、娘2人もけがをした事故をきっかけに、あおり運転が社会問題化。警察庁は18年1月、あらゆる法令を駆使し取り締まりを強化するよう都道府県警に通達を出した。

 現行法には、あおり運転そのものを罰する規定はなく、前の車との距離を極端に詰める道交法の車間距離保持義務違反や刑法の暴行罪などで摘発が重ねられてきた。しかし罰則は暴行罪でも「2年以下の懲役または30万円以下の罰金」。人の命を奪う危険もあるのに軽すぎると批判の声が広がり、政府は厳罰化や規制強化を表明していた。

 あおり運転を明確に犯罪と規定することにより、一定の抑止効果は期待できよう。ただ、それは根絶に向けた一歩にすぎない。運転免許取得・更新時の講習などを通じ、危険運転排除の意識を定着させるなど地道な取り組みも進め、包囲網を着実に狭めていきたい。

 警察庁案では、車間距離を極端に詰めたり、急ブレーキを掛けたりといった行為を「通行の妨害目的」で行い「交通の危険を生じさせる恐れ」を引き起こすケースを、あおり運転として定義。高速道路上で他の車を停止させるなど著しい危険を生じさせる行為も対象とし、こうした違反を意図的に執拗(しつよう)に繰り返すことを摘発の要件とする。

 罰則は暴行罪や「3年以下の懲役」の強要罪を軸に検討する。違反点数は即、免許取り消しとなる15点以上で、再取得までの欠格期間は1年以上とする。高速道路などでの車間距離保持義務違反の点数は今は2点、罰則は「3月以下の懲役または5万円以下の罰金」で、大幅に厳しくなる。

 一方、東名事故で裁判員裁判の一審横浜地裁は被告に自動車運転処罰法の危険運転致死傷罪を適用し、懲役18年の判決を言い渡した。処罰法は「通行妨害の目的で走行中の車の直前に進入」などを危険運転と規定。地裁は「停車させた行為は危険運転に当たらない」としながらも、妨害運転と死亡事故の因果関係を認め、危険運転致死傷罪が成立すると判断した。

 控訴審判決で東京高裁は審理手続きに違法な点があるとして、一審判決を破棄して審理を横浜地裁に差し戻したが、妨害運転と死亡事故の因果関係を認めた一審判断に誤りはないとしている。

 専門家の間には、こうした判断が法の拡大解釈との見解もあり、法務省は停車行為なども危険運転として確実に認定できるようにしたいとの考えから、法改正の検討を進めているとみられる。

 あおり運転について警察庁が今年10月、ドライバー2681人にアンケートを実施したところ、過去1年間に被害を受けた経験があると答えた人は939人に上り、約3人に1人という高い割合となった。厳罰化を前に、ドライバー一人一人が日ごろの運転を振り返ってみる必要があるだろう。(共同通信・堤秀司)

このエントリーをはてなブックマークに追加