経済協力開発機構(OECD)の昨年の国際学力調査で、79カ国・地域のうち、日本の高校1年の読解力は15位となり、前回の2015年の8位から下がった。調査は3年ごとで、2回続けて低下し、教育現場に波紋を広げている。だが、順位に一喜一憂するより、人生に必要な読解力を子どもたちが獲得しているかどうかに注目するべきだ。

 この学習到達度調査(PISA)は日本の教育政策に大きな影響を与え、03年調査での順位低下は、学習時間や内容を減らした「ゆとり教育」からの転換につながった。文部科学省には今後、的確な検証を期待したい。

 一方で、数学的応用力と科学的応用力はトップ水準を維持し、読解力も、長期的傾向では大きな変化はないとされた。文科省は、前回からパソコンを使った調査に移行した影響を指摘する。

 今回の調査の中心は、インターネットへの投稿などさまざまな情報を判断し、活用する「デジタル読解力」だった。

 日本は授業でのデジタル機器利用時間がOECD加盟国で最下位と短く、不利に働いた可能性がある。校外でも高校生が日常的に使うのはスマートフォンで、調査で求められたような画面上で長文を読み、キーボードで入力する経験は乏しい。

 特別教室だけでなく、普通の教室でパソコンを使えるように機器や無線LANの整備を急ぐべきだ。もちろん、研修を充実させるなど、教員への対応も大切だ。

 さらに、より本質的な懸念が教育現場から出ている。スマホでは短文のやりとりが中心で、長い文章を読み書きする経験が減り、教科書の意味をきちんと理解できない子どもが増えているという声だ。読解力の成績で下位層が増えたことはその証左とも言える。

 家庭環境による「情報格差」の問題も見逃せない。経済力や文化的な環境などで区分した最下位25%の階層では、読解力が社会への対応に不十分な「レベル1」以下の生徒が4人に1人に及んでいる。従来型の読解力低下以外に、経済的理由でデジタル機器がない家庭の生徒により不利な影響があったとも思える。先月末、新たな「子どもの貧困対策大綱」が閣議決定されたが、こうした点にも目配りが欠かせない。

 調査によると、本や新聞を読む生徒は読解力の得点が高いが、新聞を月に数回以上読む日本の生徒は22%にとどまり、09年より36ポイントも減ってOECD平均を下回った。読む生徒と読まない生徒で最も得点差が開いたのは小説などのフィクションで、次が新聞だった。

 新学習指導要領では、国語で論理的に展開される文章の指導に力を入れるというが、論理的な文章だけでなく、幅広く活字に親しむ経験が読解力向上につながりそうだ。

 OECDによると、調査で実施した生徒へのアンケートでは、もう一つ、気になる結果が出た。人生に意味があると思うかを尋ねたところ、そう思うと答えた日本の生徒は世界で最も少なかった。いくら成績が良くても、多くの子どもが生きる意味を見いだせないような教育は失敗だ。

 日本の子どもの自殺は増加傾向が続いている。生きる意味を感じ取れるような教育を目指すべきだ。社会で生きていく上で土台となる真の読解力の育成に向け、教育への予算も手間も惜しんではならない。(共同通信・池谷孝司)

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