バブル崩壊後の就職難のため、非正規雇用などが多くなった30代半ばから40代半ばの「就職氷河期世代」に対し、政府が就労支援に乗り出した。

 特定の世代を対象とする対策は異例だ。この世代が現状のまま65歳以上になると社会保障の財政が一層悪化するという危機感が政府を突き動かしている。腰を上げるのが遅すぎだとの批判もあるが、今がラストチャンスと考え、官民を挙げて早急に成果を出すべきだ。

 氷河期世代は1990年代半ばから約10年間に大学などを卒業した。団塊の世代の子どもで第2次ベビーブームをもたらした「団塊ジュニア世代」を含む比較的人口が多い層だ。バブル崩壊後の景気後退で企業は新卒採用を大幅に抑制。リクルートワークス研究所によると、大卒求人倍率はピークだった91年卒の2・86倍に対し、2000年卒は1倍を下回った。

 このため現状でも、正社員を希望しながら非正規で働く約50万人や引きこもり状況にある人などが計約100万人に上る。これら低所得、不安定な暮らしを余儀なくされ、厚生年金未加入も多い人たちを対象に、政府は3年間で正社員を30万人増やす目標を掲げた。

 バブル崩壊の結果責任は財政、金融政策を所管する政府や日銀にもあるだろうが、就職氷河期の到来には不幸な巡り合わせがあったのも事実だ。たとえば当時は人口のボリュームが大きい団塊の世代が定年前で、終身雇用が基本の企業は新卒採用を一斉に絞り込む。景気後退と日本型雇用が相まって氷河期を呼んだ。

 一方、政府の施策や不作為の累積が氷河期世代を長く苦しめる結果につながったのも確かだ。当初は対象業務が限定的だった労働者派遣法を90年代から相次いで改正し、製造業などへの派遣を解禁したことは、企業が正社員採用を抑え非正規雇用を増やしやすくした。

 2000年代に入って景気が好転し、04年ごろから08年のリーマン・ショックまでの一時期、大卒求人倍率は上向いた。氷河期世代は当時多くがまだ20代だったが、有効な雇用対策が打たれなかったため、新卒一括採用という雇用慣行の壁に阻まれ正社員への道から取り残される形になった。

 ただ安倍晋三首相が無策だったわけでもない。第1次政権時の「再チャレンジ支援総合プラン」(06年)で「就職氷河期に直面した若者、特にフリーターの常用雇用化」を表明。だが翌年の退陣で立ち消えになった。今回の支援は首相にとっての再チャレンジでもあるが、この間10年超の経過で問題がより深刻化したと言わざるを得ない。

 氷河期世代には50代を迎えようとしている人もいる。団塊ジュニア世代の子どもによる「第3次ベビーブーム」が訪れなかったのは、低所得から結婚や子育てを断念した原因が推測され、それは少子化に拍車を掛け、消費低迷にもつながった。さらに問題なのは、40年には彼らも65歳を迎え始め、低年金で困窮し生活保護受給が増大する懸念が高まっていることだ。

 政府は、ハローワークの専門窓口や民間業者への委託で正社員化を進めるほか、国家公務員への中途採用も推進する。だが30万人正社員化の目標は、民間企業や自治体がこぞって中途採用を拡大しない限り達成困難だろう。氷河期世代にも高齢化が迫っており、猶予はないと認識するべきだ。(共同通信・古口健二)

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