SAGAサンライズパークの整備事業で新設されるアリーナ2階の玄関広場のイメージ図(佐賀県提供)

 2023年秋の国民スポーツ大会、全国障害者スポーツ大会のメイン会場となるSAGAサンライズパーク(旧佐賀県総合運動場一帯)のアリーナ工事の入札不落が波紋を広げている。再入札を目指して11月定例県議会に提出した建設費などの増額補正案は65億円(継続費)。額の大きさに建設業界や県職員から驚きの声が上がる。県議会も「簡単に認められない」と反発を強め、先行きは不透明だ。4日からの県議会一般質問での質疑が焦点になる。

 11月28日の県議会開会日の冒頭、山口祥義知事は不落の要因に言及した。「民間の大型開発や大規模災害の復旧工事で鉄骨の需給バランスが崩れ、設計時から入札時までの期間に建設市況が大きく変化し、資材が高騰した」。県は建設費上限の予定価格と、入札価格を公表していないが、アリーナ単体で197億円から257億円に引き上げられた建設費の見込み額から、相当の開きがあったことが明らかになった。

 「鉄骨だけで60億円増えた説明がつくと思うのか」「アリーナをやめて体育館に変えればいい」。翌日の自民党会派の議案勉強会。執行部の説明に議員らが猛反発し、予定の終了時間を大幅に超えた。県は再入札を控えて詳細な数字を説明できずにいる。中堅県議は「誰も納得していない。答弁次第では否決の可能性もある」と語気を強める。ベテランも「60億円は公費。質疑で徹底的に経緯をただす。付帯決議なども視野に入れていく」と述べた。

 10月末の開札で不落となった直後、県庁内には危機感が広がった。担当の文化・スポーツ交流局だけでなく、政策部と総務部が介入する重大案件になった。11月議会に増額補正を提案するため、急ピッチで不落の原因分析や設計の検証を進め、九州地方整備局にも相談して対応策が練られた。

 県はパークを「新たな県の未来を切り拓く『さが躍動』の象徴的エリア」と位置付ける。県幹部は「国の補助金に頼らず、県の一般財源でやると覚悟を決めて臨む記念碑的な事業。手掛ければ建設業者としても『誇り』になるはずなのに」と不落に首をかしげる。

 県内の建設業関係者は分析する。「県にとって数十年に一度の大事業でも全国から見れば桁が違う。無理する必要はない。不況時ならシンボリックな事業を赤字覚悟で請けて実績をつくり、次の仕事につなげたいと思うが、建築バブルが続く今は違う」

 東京五輪絡みの開発に加え、福岡市天神地区ではビル30棟の建て替えを目指す再開発促進事業「天神ビッグバン」が進む。鉄骨加工工場の需要が高まった要因の一つとされる。調査会社の関係者は「業界全体で安く請ける必要がない状況だ。下請け業者も強気になっている」と解説する。県に対しては「設計事務所に頼り切りではなく、県が自ら相場を把握する努力が大切だ」と指摘した。

 県は増額補正案が議会で承認されれば、速やかに入札の再公告を目指す考え。順調に落札された場合も、世界貿易機関(WTO)協定に基づき40日間以上の公告期間が必要で、県が予定する2月定例県議会に契約議案を提出できるかは微妙な情勢という。出直しを迫られた山口県政の象徴的プロジェクトが揺れている。

■SAGAアリーナ(仮称) 地上4階建て、延べ床面積約3万平方メートル、観客席は約8400席。工期は約31カ月間を予定する。佐賀県は8月23日に総合評価方式による一般競争入札で工事を公告し、10月末に開札した。参加した共同企業体(JV)や入札数は公表していないが、参加者が現れない「不調」ではなく、入札価格が予定価格を上回る「不落」だった。

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