県展知事賞を受賞した松浦孝さん=鹿島市内の自宅

◆歩いて瞬間に出合う

 山小屋のような場所で出合った窓は、赤く色づいていた。長年にわたりまきを燃やす煙と、太陽光にさらされてきたのだろう。月日の経過とともに窓は黒ずみ、輝きは消えた。鮮やかな一瞬を捉えたカットを「時の流れ」と名付けた。
 定年後、本格的に撮り始めた。先輩の愛好家が言っていた言葉を大事にしている。「写真は歩いて撮る。健康にもなるから」。車から降りて歩くと、さまざまな被写体や構図が見えてくる。あえて明け方や夜の撮影を目指すのも楽しい。県展には9年前から応募してきた。初の知事賞に「恥じないよう、もっと精進する」と話す。写真は「元気のもと。自分がいいと思える作品を撮り続けたい」と意欲を見せた。

 

=講評= 発見と感動の心忘れずに

 昨今のデジタルカメラの高画質化は、みなさんが撮られるような写真の完成度を上げていることは事実です。しかし、写真の記録性や表現力を十分に引き出しているか否かが「作品」にとって大きな評価のポイントになります。撮影者ひとりひとりの「まなざし」と「伝えようとする意志」が反映されていてほしいと思っています。
 まず、ベテラン写真愛好家のみなさんに混じって、高校写真部の生徒さんたちの元気な作品がたくさんあったのは大きな収穫だと思います。
 そんな印象の中、県知事賞「時の流れ」は色合いの強烈さだけでなく、震災や水害、あるいは大規模な災害など昨今の困難をもイメージさせ、猫の直接的なまなざしが不屈の意志さえも想起させます。
 まなざしは、当然人間のそれにも関わり、教育委員会賞「lesson」は少年の未来をも貫くほどの強いイメージを放っていますし、「まなざし」も旅行写真の領域を超えていくリアリティーが感じられます。
 また、令和記念特別賞「奉納」も、伝統と後継者といった地域の問題を考える上で、登場するお二人のまなざしの優しさにこちらもつい共感を覚えます。
 よく写った喜びに加えて「発見」と「感動」する心を忘れずに、とにかく、シャッターをたくさん押すことを強くお勧めいたします。みなさんの素朴な想いを大事にして下さい!
(日本写真家協会会員・大西みつぐ)

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