従来、パワー・ハラスメント(パワハラ)とは、組織の中で上司が部下に対して、心身に外傷を負わせる言動を意味していました。しかし、最近、この現象とは反対に、大学内では、学生さんが指導教員に対して、事実無根の暴言・批判を100回以上もメールで送り続け、指導教員は不安・不眠状態に陥り、健康支援センターを受診。1カ月の病休の診断書を提出し、現在やっと回復の道をたどっています。その学生さんの母親の方にも連絡をとりましたが、子どもがかわいいためか、子どもの行動に拍車をかけ続け、まだ、問題の収拾に至っていません。

 メールの内容につきましては守秘義務があり、明らかにできませんが、被害者はその指導教員だけでなく、同僚の学生および3人の指導教員にも、同様のメールを送り続けており、みんなが不安・不眠状態を呈したほどのメール攻撃で、手が付けられない状態でした。その行動に対して、まだ本人は事の重大さに気づいていないようです。どれだけの人を巻き込んでいるのか、理解してほしいですね。

 私はこれまで、教員が学生に対して暴言を吐いたり、強制的に深夜遅くまで、実験をさせたり、時間外及び土日にも休ませずに、実験を続けたりして、パワハラとして、訴えた学生さんの事実は経験しました。しかし、今回は、その逆で、学生さんが教員に事実無根の暴言、批判、中傷などのメールを送り続けるという異例の事態でした。

 皆さんはどう思われるでしょうか。かつては、生徒は先生に尊敬の念を抱き、指導を受け、卒業し、社会に旅立つのが一般的でした。この真逆の事態は、まれであるとは思いますが、学生の先生に抱く感謝の気持ちが、現代社会では薄れつつあるのか、非常に残念で悲しい気持ちになりました。何事も感謝の気持ちを忘れてはならないですね。(九州大学キャンパスライフ・健康支援センター教授・副センター長・統括産業医 佐藤武)

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