「如月の宵」(F50号)

九州の景色を描いた作品を並べる伊万里市の林良一さん=佐賀市松原のギャラリーシルクロ

 かつて妻と約束した九州を巡る旅。伊万里市の林良一さん(73)が、果たされなかった約束をスケッチでなぞる。具象と抽象を行き来した、熊本や大分など九州の景色22点を並べた。

 下絵を施した色画用紙に、目の前の風景を重ねていく。絵の具を霧吹きで吹き付けたり、紙で挟んで広げたり、偶然の模様を下敷きにした水彩画で具象画ながら抽象の雰囲気も帯びる。

 林さんは横浜市でスカーフやハンカチなど布製品のテキスタイルデザインに携わり、退職後10年前に息子が住む伊万里に転居した。デザインの思考に裏打ちされた作品群は、目をひく鮮やかさで幻想的な世界に誘う。

 2017年に県美術協会展で山口亮一賞を受けた「如月(きさらぎ)の宵」も並べる。長年追い続ける干潟をモチーフに、工業用のブロンズ箔(はく)を貼り付けて朝日に照らされる干潟のきらめきを再現した。

 林さんは「旅行を約束した妻は3年前に亡くなった。当時は描くになれなかった妻と見た思い出の景色を描けて、一つの区切りになった」と語る。(

 ▶佐賀市松原のギャラリーシルクロ=電話050(1438)0501=で、24日まで。

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