見送りになった英語の民間検定試験に続き、国語と数学で導入予定の記述式問題に批判が強まっている。大学入試センター試験の後継として2020年度から始まる大学入学共通テスト。入試改革の目玉だったが、50万人超が受ける試験に記述式はやはり無理がある。受験生の不安は解消しておらず、もはや延期し、一から見直すべきだ。

 記述式の課題は主に二つある。一つはどれだけ正確に採点できるか。従来のマークシート式と違い、文章の答案を人が判断するため、採点ミスの余地がある。18年の試行調査の国語では0・3%あった。50万人では1500人に相当する。記述式の採点業務は約61億円でベネッセグループが受託している。民間委託で採点者の質に焦点が当たり「学生アルバイトが採点するのか」と心配する声が広がった。

 もう一つは自己採点が正確にできるか。国公立大の場合、受験生が自分で採点し、点数に応じて各大学の2次試験に出願する。記述式は自分の解答がどの程度正答条件に当てはまり、何点取れたかが分かりづらい。試行調査では実際の成績とのずれが国語で約3割出た。

 このため、受験生の不安が高まり、「安全志向」で合格しやすい大学に流れるとの分析もある。実施態勢の不備が進路選択に影響しかねない。

 課題を検証するため、大学入試センターは今月、約2万人の高校生らを対象に準備事業を始めた。だが、採点作業に焦点を絞り、自己採点のずれへの対策は範囲外。もう試行調査の予定はなく、不安を残したままぶっつけ本番になってしまう。

 センターは、簡潔で採点しやすい設問にして乗り切ろうとするが、問題を易しくすればするほど逆に、暗記型の知識でなく、思考力や判断力、表現力を測るという本来の趣旨から離れる矛盾を生む。「中身はともかく記述式を」というのでは本末転倒で、これほど手間を掛け、何のために導入するのか分からなくなる。

 当初から疑問視されていた問題が改善されないまま、既定方針として突き進んできた構図は英語民間試験と全く同じだ。実施が近づくにつれて実態が知られ、むしろ、疑問は強まっている。

 今月に入り、高校生たちが約4万2千人の署名を文部科学省に提出して共通テスト自体の中止を求め、大学教授らの団体も同省に延期を要望した。野党は記述式の導入をやめる法案を提出した。

 文科省は国公立大に対し、2次試験に進む受験生を絞り込む二段階選抜で、国語の記述式問題の成績を判断材料から外すように求める検討に入った。文科省自身が問題ありと認めた形だ。だが、小手先の対応で解決するとは思えない。

 衆参予算委員会では野党が厳しく追及した。萩生田光一文科相は、記述式は文科省が契約により直接、改善を指示できるとして、実施団体に頼むしかなかった英語との違いを強調した。だが、民間に任せる点は同じだ。1万人規模の採点者が必要とはいえ、どうしても民間に頼らねばならないのか。素早い採点のため事前に問題や正答例を業者に知らせることから外部流出の懸念も残る。

 記述式の能力は大規模な共通テストでなく、各大学の2次で判断すればいいのではないか。今が、立ち止まって冷静に考え直せるぎりぎりのタイミングだ。(共同通信・池谷孝司)

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