巨大な陶板壁画の前で講演する十四代中里太郎右衛門さん(右)と、鹿児島市立美術館の山西健夫さん=唐津市役所

陶板壁画を間近で見る講演会の参加者

 唐津市役所庁舎内の壁を飾る唐津焼陶板壁画の制作背景と、その価値を探る講演会が16日、同市役所で開かれた。十四代中里太郎右衛門さんらが、日本抽象画の大家と共同して大作を作り上げた先々代らの役割について語った。

 1962年の現庁舎の建設に合わせて作られた陶板壁画は、市役所1階と2階をつなぐ階段の踊り場の壁に飾られている。日本抽象画の先駆者といわれる山口長男(たけお)(1902~83年)が原画を手掛け、中里太郎右衛門陶房が焼成した。作品名は「遊」。縦3・6メートル、横13・3メートルある。

 講演会は壁画を臨む1階ロビーであり、中里さんと、山口の業績に詳しい鹿児島市立美術館の学芸アドバイザー山西健夫さんが語り合った。中里さんは、制作時の詳細は分からないとした上で、「陶房の当主だった十二代(無庵)が発注を受け(父逢庵や重利、隆氏の兄弟)総出で制作に当たったのでは」と推測。黒と黄の無数の陶板からなる作品を前に「この仕事量をこなすのは至難の業」と話した。

 山西さんは庁舎の建設時、壁画下の窓の外には日本庭園があったことを紹介した。その上で「作品の黒い部分は空、黄色い格子は雲を表している」と解説。自然との触れ合いを大事にした山口の理念を説明し、「自分の絵が土の作品になったことは、絵が自然に返ったようでうれしかったのでは」と話した。

 壁画は現在、4分の1をエレベーターホールに覆われており、市は庁舎の建て替えに伴って移設を検討している。

 「まちはミュージアムの会」が、作品の価値を知ってもらおうと主催し、約60人が聴いた。市内から参加した主婦竹内りかさん(57)は「市役所に頻繁に来るが、こんな素晴らしい作品があるとは気付かなかった。全体が見える形で保存してほしい」と話した。

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