日系の語学学校CNE1の日本語トレーニングセンターで学ぶフィリピン人の生徒たち。日本の地方都市への就職が決まっている=タルラック州サンマニュエル

 朝夕、激しい交通渋滞にのまれる首都マニラを逃れ車で北へ3時間。タルラック州サンマニュエルは、のどかな田園地帯が広がる。

 16ヘクタールもの敷地に校舎と寄宿舎を構える日系語学学校「CNE1」は、青森県の学校法人・八戸学院グループと提携し、フィリピン人学生の日本への就労をサポートしている。「都市部より経済的に厳しい地方にこそ、日本で働くチャンスを提供したい」。同校のスクールカウンセラー窪匡将さん(24)は力を込めた。

 「地方」にこだわるのには理由がある。外国人労働者が日本で就労しても、賃金水準が高い大都市に偏る懸念は強い。ただでさえ若い労働力の流出に悩む地方はますます人手不足が深刻化しかねない。同校では特に、こうした地方にIT分野や製造業の人材を供給しようというのである。

 昨年開設した「日本語トレーニングセンター」では現在、3期生7人が半年間、基礎的な日本語の読み書きを学んでいる。全員が大学でコンピューターや電子工学を専攻。専門技術を持つ「高度人材」として、来春には福井や山形県の中小企業に機械製図(CAD)のオペレーターなどとして就職が決まっている。

 彼らはCNE1が提携する地方大学の出身。八戸学院グループが日本国内で外国人材を求める企業を募り、学生とのマッチング面接を行う。採用が決まれば同センターに入校し、日本での生活に必要な日常会話や習慣などを身に付ける。

 1人約60万円の学費は採用企業が負担する。企業にしてみれば、国内で確保するのが難しい技術者を「青田買い」するための投資である。中には将来、フィリピンでの事業展開をにらむ採用先もあるという。

 貴重な技術者をいかに地方に定着させるか、企業の姿勢も問われる。待遇はもちろん、日常生活のきめ細かな支援、せっかく受け入れた人材を流出させず地域で雇用を継続するための情報提供なども欠かせない。

 「一時的な労働力の補完ではなく、家族のように受け入れ、基幹業務まで担える人材に育てる姿勢が企業に必要」と窪さんは言う。

 長期的な戦略も始動している。昨年6月、敷地内に中高一貫の「八戸学院カーテル校」を開校。地元の高校生に無償で日本語教育をスタートさせた。早い段階から日本語に親しんだ若者たちが、やがて続々と日本へ向かう。目指すのは、そんな人材づくりの拠点だ。

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