天皇陛下が内外に即位を宣言された「即位礼正殿の儀」に続いて重要儀式の「大嘗宮(だいじょうきゅう)の儀」が終わり、5月に始まった即位関連行事は大きなヤマを越えた。今後、政府がいつ、どのような形で皇位の安定継承に向けた議論に着手するかが焦点となる。しかし「先延ばしできない重要な課題」と言いながら、なかなか腰を上げようとしない。

 2017年6月、上皇さまの天皇退位を実現させる特例法が成立。衆参両院の付帯決議は、今年4月30日の法施行後、速やかに「安定的な皇位継承を確保するための諸課題」などを検討し、国会に報告するよう政府に求めた。本来なら5月1日の即位後、間を置かず議論に入るべきだった。

 ところが議論は始まらず、政府内では、皇位継承策を検討する有識者会議の設置を来春以降に先送りする案まで浮上。祝賀ムードの中で国論を二分するような論争は避けたいとの声も聞こえてくる。とはいえ、論点は出尽くしている。女性・女系天皇を容認するか、女性宮家を創設するか、旧宮家の子孫に皇室入りしてもらうか―などだ。

 与野党間の主張の違いは大きく、論争の行方を見通すのは難しいが、何も手を打たなければ、象徴天皇制が揺らぎかねないことは誰の目にも明らかだろう。議論の先送りは怠慢のそしりを免れない。政府は早急に議論の環境を整えるべきだ。

 女性天皇は歴史上、10代8人いる。いずれも父方が天皇の血筋につながる「男系」で、在位中は独身だった。皇位継承候補の男性皇族が複数いたり、幼少だったりして継承者を決められないときに「中継ぎ役」として即位したともいわれる。母方で天皇につながる「女系」の天皇はいない。

 明治時代、旧皇室典範の制定時に女性天皇を可能にする案もあった。結局、歴史・伝統に沿わないなどの理由で皇位継承資格を「男系男子」に限定。現行の皇室典範に引き継がれたが、2005年11月、小泉政権下の有識者会議は「古来続いてきた男系継承を安定的に維持するのは困難で、皇位継承資格を女性や女系の皇族に拡大することが必要」と結論付けた。

 ただ06年、秋篠宮家に悠仁(ひさひと)さまが生まれ、典範改正は見送られた。女性・女系天皇の議論が下火になる中、12年10月には旧民主党政権が皇族減少対策で、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる女性宮家創設を柱に検討する方向性を打ち出したが、直後の政権交代で立ち消えになってしまった。

 安倍晋三首相は「男系維持」を強調。皇室の歴史と断絶するとして、女系天皇には「明確に反対」の立場だ。女系天皇につながると、女性宮家にも反対。これまで、戦後に皇籍を離れた旧宮家の男系男子に皇族に復帰してもらう、あるいは、現在ある宮家の養子に入ってもらうといった方策を提唱した。自民党保守派の主張もこれに近い。

 事態は切迫しているといっていい。皇位継承資格者は現在、継承順に皇嗣(こうし)の秋篠宮さま、悠仁さま、上皇さまの弟、常陸宮さまの3人。現行制度のままで皇位を引き継いでいくなら将来、悠仁さまに男子が誕生するのを期待するほかないという綱渡りの状態が続く。

 女性天皇や旧宮家復帰など、どの方策を巡っても激しい論争が予想され、容易に結論は出ないだろう。政府は危機感を持って臨む必要がある。(共同通信・堤秀司)

このエントリーをはてなブックマークに追加