佐賀県嬉野市の養護老人ホームで入所者の胃ろう用カテーテルを引き抜いたとして傷害罪に問われ、2017年12月に無罪が確定した女性職員(34)=鹿島市=が労災認定を受けていたことが14日、関係者への取材で分かった。武雄労働基準監督署は、女性が施設側から犯人視され、自宅待機を命じられた直後に適応障害を発病したと認めた。認定は今年4月23日付。

 女性の代理人の吉田俊介弁護士などによると、老人ホームで男性入所者のカテーテルが抜ける事案が14年末に相次ぎ、施設側が15年2月に女性に出勤停止と自宅待機を命じた。女性はこの後、傷害容疑で鹿島署に逮捕され、捜査段階や起訴後の公判で一貫して無罪を主張。佐賀地裁は17年12月に「故意に引き抜いたとするには合理的な疑いが残る」と無罪判決を言い渡し、確定した。

 女性側は「言い分を聞かれることもなく犯人扱いされ、警察に通報されるなど精神的苦痛を負った。睡眠障害を起こし、歩行できなくなるほどの精神状態となった」として18年10月に武雄労基署に労災を申請。労基署は待機命令直後の適応障害の発病を業務によるものと認め、3段階ある心理的負荷は「強」と評価した。

 労災認定について、吉田弁護士は「正当で画期的な判断。職場の不十分な調査で誤った疑いを掛けられる事案があれば、同じように認められるべき」と指摘。施設を運営する社会福祉法人は「待機命令は入所者の安全確保のため、行政に事前に相談した上で判断した。労基署の判断については答える立場にない」とコメントした。

 女性は現在も抑うつなどの症状が続いており、職場には復帰できていないという。女性は18年7月、「調査が尽くされないまま犯人と決め付けられ、甚大な肉体と精神的苦痛を受けた」として社会福祉法人に損害賠償などを求めて佐賀地裁に提訴しており、訴訟は係属している。

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