週末は寒くなりそうだというので、そろそろ冬支度をあれこれ思案する。秋の終わり、昔の人はコオロギの鳴き声を「肩刺せ、裾刺せ、つづれ刺せ」と、冬が来る前に着物の肩や裾のほころびを直すよう、せき立てていると聞きなしたそうだ。いくら耳を澄ましても、リッリッリッとしか聞こえない、わが感性が悲しくもある◆それは、からだの構造にも一因があるらしい。人間は虫を見ても自分と構造が違うから、もだえていてもなかなか同情できない。ところが脊椎動物となると、魚がバタバタしていると、何となく苦しんでいることがわかる。生物学者の池田清彦さんによると、からだで痛みを理解し合う、深いコミュニケーションがあるのかもしれないという◆この連中も、どこか構造が違うのだろう。大阪府茨木市の消防分署で、部下をポンプ車に逆さづりにしたり、血圧計の計測ベルトで首をしめたりした消防署員3人が懲戒免職になった。「若い職員とコミュニケーションを取りたかった」という。どうやら、痛みまで交感できる回路はなかったようである◆神戸の小学校で起きた先生たちのいじめにも似通って見える。子どもの世界にばかり眉根を寄せている場合ではない◆大人社会のほころびを早く縫え―「つづれさせ」とも呼ばれる秋の虫の、そんな鳴き声が聞こえそうである。(桑)

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