会長室で白衣姿の藤﨑伸太さん=唐津市栄町の藤﨑病院

 唐津市栄町の医療法人会長藤﨑伸太さんが佐賀県文学賞随筆部門の秀作に選ばれた。海軍兵学校の生徒だった74年前、虚脱と放心の中で「8月15日」を迎え、今年90歳。泌尿器科医の傍ら、次代への伝言にと、戦争と軍隊の実相をつづってきた。

 作品の題名は「二つのお守りに守られた~私の昭和平成」。お守りの一つは兵学校入学時、幼なじみの少女から写真とともに託された。もう一つは59歳で脳出血で倒れ、回復後、妻洋子さんと一緒に巡礼した四国八十八カ所礼所の納経帳。

 少女からのお守りは訓練中紛失し、分隊長のもとに届けられていた。写真入りだけに「鉄拳の10発は」と覚悟したが、「大切なお守りを落とすなんて。海軍生徒はきちんとしておけ」と叱りを受けただけで、「こんな上官のもとでなら死んでもいいと思った」と若き軍国少年の日を回想する。

 兵学校では人間魚雷の乗員を目指して猛訓練を受けた。敗戦間際には至急電を傍受する通信業務担当として戦況の悪化を知りつつ、祖国防衛と信じて戦地に飛び立つ同僚を送り出した。そして陸軍省書記を志願した少女は中国・満州に送り込まれ、病死したという。

 それだけに命の尊さを痛感し、復員後、医学の道を選んだ。唐津東松浦医師会長時代(1984~94年)は医師会だよりの巻頭言を書き続け、『栄町雑記』を出版した。県文学賞は2016年から応募し、初回で佳作となり、今回、1~3席に次ぐ秀作に選ばれた。

 最近は腰を悪くし、外出はままならないが、自宅と病院会長室を行き来する日々の中でペンを執る。入賞を喜びながら「書いてきたことの90%が戦争のこと。生き残った者としてそれが使命」と話す。

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