女優の杉田かおるさんは長く母親の介護に携わった。先日、小城市で講演し、その日々を語った。もうすぐ3回忌という母親への思いが募ったのだろう。時折、声を詰まらせての講演だった◆病気、老い、やがて来る死。それにどう向き合えばいいか。7歳でデビューした杉田さんは「演技はできても(介護に)教科書はなく、未知の世界だった」と明かした。肺を患い、余命いくばくもない母。母子家庭で育った杉田さんにとって、かけがえのない存在だった◆「仕事を断らなければというジレンマもあったが、いまできることは何かを考えた」。その答えが「介護をしてあげている」という姿勢ではなく、「一緒に居る時間を持ち、楽しく過ごす」ということだった。自分一人で抱え込まず、周囲に相談し頼りながら、笑顔の介護をめざした◆懸命のリハビリで2カ月で200メートル歩けるようになり、食事やトイレもできるようになった。そして病院から施設に移って3週間後に母親は息を引き取った◆母親の出身地は神埼市千代田町。「縁が深い佐賀でお話ができて本当にうれしかった」と涙をこぼし、自らのヒット曲「鳥の詩」を歌った。〈人は人と別れて/あとで何を想(おも)う〉。介護は家族の悩みも大きいが、精いっぱい向き合えば、いつか来る別れも乗り越えられる。そんな歌に聞こえた。(丸)

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