河井克行法相が、7月の参院選で初当選した妻の公選法違反疑惑、自身の贈答品疑惑を週刊誌で報じられ、辞任した。

 内閣改造から2カ月足らずで、先週の菅原一秀前経済産業相に続き2人目の辞任である。いずれも国会審議への出席直前の交代。安倍晋三首相は「任命責任がある」と繰り返すなら、両氏が事実関係について国民に説明責任を果たすよう指導力を発揮するべきだ。

 週刊文春によると、河井氏の妻案里氏の選挙事務所が運動員13人に対し、日当として法定上限の1万5千円を超す3万円を渡した疑惑がある。事実なら公選法違反の運動員買収に当たる可能性がある。案里氏の選挙活動は夫の河井氏が事実上仕切り、河井氏自身にも事務所が有権者にジャガイモなどの贈答品を配った疑いがあるとも報じた。

 河井氏は辞任理由を「法務行政をつかさどる立場として一点の曇りもあってはならない」と表明。一方で、疑惑については「私も妻も全くあずかり知らない。選挙事務所のことはお願いしていた」と強調した。菅原氏も、地元有権者に秘書が香典を渡したという公選法違反疑惑を週刊誌に報じられ、「結果として秘書が香典を出した」と認めて辞任しており、似たケースが続いたと言える。

 閣僚はもちろん、唯一の立法府に所属する国会議員が高いコンプライアンス(法令順守)意識を持つべきなのは言うまでもない。中でも、自分たちの身分の源泉である選挙のルールは厳守が当然だ。にもかかわらず、検察庁も所管する「法の番人」である法務省のトップにしてこのルーズさは論外と言わざるを得ない。

 しかも2人は、いずれも辞任当日に予定されていた国会審議への出席を直前に回避して辞表提出した。河井氏は「あずかり知らない」と関与を否定するなら、堂々と国会の場で野党の質疑を受け、事実関係を説明するべきではないのか。

 さらに言えば、「秘書が出した」と言った菅原氏に続き、河井氏の「事務所にお願いしていた」という発言はいかがなものか。たとえば会社の社長には社員の管理責任があり、社員の不祥事も当然、社長が責任を負うはずだ。「知らなかった」の類いは簡単に口にすべきでない言い訳だ。

 そして安倍首相は河井氏について「任命したのは私だ。こうした結果となり責任を痛感している」と記者団に述べた。菅原氏の際も同様の発言があった。それでは、任命責任を果たすというのは具体的に何を指すのか。野党が「首相は口では言うが、何も行動していない」(福山哲郎立憲民主党幹事長)と批判するのも当然だろう。

 河井氏は菅原氏と同じく自民党の無派閥議員で、いずれも実力者である菅義偉官房長官に近い。初入閣に当たって政治とカネの問題をチェックする「身体検査」が「身内」に甘かったのではないか。「お友達内閣」と批判された2007年の第1次政権で起きた「辞任ドミノ」の再現だと指摘されても仕方あるまい。

 改造内閣ではほかに萩生田光一文部科学相や河野太郎防衛相が問題発言で陳謝に追い込まれた。安倍首相は11月に通算在職日数が歴代最長になる。長期政権の「緩み」が出てきたとのそしりも免れまい。仕切り直しのためにも首相は、野党が求める衆参予算委員会での一連の疑惑解明に積極的に協力すべきだ。(共同通信・古口健二)

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