渾天儀(多久市郷土資料館蔵)

 渾天儀は、中国で紀元前2世紀頃から使われていた、天体の位置を測定する器械です。日本国内には42基の渾天儀が確認されていますが、ほとんどは観測用ではなく天空の模型として作られています。そのうちの一つが多久市郷土資料館に所蔵されています。

 「天体は観測者を中心とした巨大な球(天球)に張り付いている」という考え方に基づき、水平を表す地平環や太陽の軌道を表す黄道環、月の軌道を表す白道環、天球上の経線を表し天球の北極と南極を結ぶ天経線などで構成されています。天の北極は江戸の緯度で表されていることから、既製品を何らかの形で入手したものと考えられます。可動式ですが、後世の修理で動かすことができなくなりました。

 もとは多久領の学校である東原庠舎の備品で、箱には「天明八年(1788年)八月改」と墨書されており、このころには既に多久にあったことが分かります。東原庠舎の正式なカリキュラムは儒学と武道ですが、実際は農学や医学など、幅広い学習が行われていました。農学には天文学の知識が必須であるため、このような備品が備えられていたと考えられます。

 後に日本初の電気工学者となった志田林三郎はじめ、東原庠舎で学んだ少年たちは、渾天儀から壮大な宇宙へ思いをはせたことでしょう。(志佐喜栄=多久市郷土資料館)

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