イラストやテレビCMの絵コンテのほか、漫画、エッセーブログまで手掛けるフリーのクリエイター、ウラケン・ボルボックスさん=鹿島市出身、愛称・ウラケンさん。今年2月には外来生物にスポットを当てた自身初の単行本「侵略!外来いきもの図鑑 もてあそばれた者たちの逆襲」を発売し、「代表作と言える物ができた」と勢いに乗る。その他にも幅広い活躍でさまざまな業界から注目を集めている。


戦略的にニーズ考え発信

 どこか緩やかな絵のタッチから、自由気ままに仕事を楽しんでいるような印象だが、「戦略的にニーズを考え、意識的に自分を発信してきた」と明かす。現在のウラケンさんに至る背景には、壁にぶつかりながらも活路を見出してきた紆余(うよ)曲折があった。

映画「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」公開に合わせて、映画の題材となった「シャロン・テート殺人事件」についてウラケンさんがまとめた相関図。映画イラストコラム「FILMAGA」に投稿した(出典元:FILMAGA=https://filmaga.filmarks.com/articles/2956)

◆本業は「コンテマン」

 ウラケンさんが「作品」として世に送り出しているものは単行本以外に、ウェブメディアの連載がある。いずれも映画を紹介する「四コマ映画」とウェブマガジン「FILMAGA」、そして今月25日まで2年余り続いた連載で、暮らしの中で見つけたアイデアや疑問について漫画も織り交ぜて発信する「ウラケンの聞き流シンパシー」もあった。いずれも親しみやすいタッチのイラストが魅力だ。
 多くの連載に単行本と、イラストレーターとして順調に注目を集める一方、収入面で「本業」と言えるのは「コンテマン」の肩書きだという。制作会社から文字だけで注文を受けたCMの流れを、漫画のような複数のイラストで表現する「絵コンテ」に仕上げる仕事だ。業界でコンテマンとしても一定の知名度がある。

◆「性に合わなかった」

 そもそもウラケンさんは、絵について美大や専門学校で教育を受けた経験はない。幼い頃から絵を描くのは好きで鹿島高校では美術部員だったが、「映画監督」を夢見て日本大学芸術学部映画学科に進学。ただ「映画での『食べ方』が分からず、CMも面白そうだったから」と、卒業後はCMプロダクションに入った。
 ところが、製作費にスケジュール、機材と、色々なモノやスタッフが絡む映像作品は「性に合わなかった。クライアントまで絡むCMはいよいよ向いていないと思い始めた」という。そんな時、ストレスでヘルニアと座骨神経痛を発症し、数週間入院したことが転機に。当時はやっていたエッセー漫画を描くと「楽しかった。絵の方が性に合っていると感じた」
 復帰した職場で絵をアピールするうちに勧められたのがコンテマンだった。憧れはイラストレーターや漫画家だが「いきなり会社を辞めても食っていけない。コンテマンの仕事はある程度知っているが、イラストレーターを目指しつつできるのか」という躊躇(ちゅうちょ)もあった。
 決断まで時間がかかりながらも、背中を押されて3年目の12月末付で退職。有休消化中には社内のプロデューサーから早速仕事が入ったという。

春秋航空日本の機内誌「空飛ぶ道の駅マガジン」で、2018年夏号から2019年冬号まで3回にわたり連載された「サーガくんの佐賀弁講座」

◆求められているもの

 CMの制作側にいた経験から、業界の事情やコンテマンに求められているものを肌で知っている。それを生かし「気の利いた」コンテを描けるのが強みだ。
 ただコンテについては「作品として残らない」という不満もあった。「コンテはプレゼンが終わったらシュレッダー行き。4年ほど前から『コンテじゃないものを描かないと』という思いが芽生えてきた」。そこで、自分が観た映画をイラストで紹介するツイッターの投稿を始めると、徐々にイラストの仕事も増えていった。
 コンテマンの仕事で得た職業人としての心得が、イラストに生きている面もある。ウラケンさんがウェブメディアで描いている作品の中で特に目を引くのは、映画の登場人物やシリーズ作品の相関図だ。どれも分かりやすくまとめられ、楽しく読ませてくれる共通点がある。
 ウラケンさんは「求められているものは何か、を考えて描く。『分かりにくいものを分かりやすくまとめたもの』は、求める人が多い。CMのコンテも、分かりやすく面白いものでなければ誰も読んでくれない」と実感を込める。

ウラケンさんが連載ブログ「ウラケンの聞き流シンパシー」に投稿し多くの共感を集めた「スタバも良いけど、オチャバが欲しい。」のイラスト(出典元:IRORIO=https://irorio.jp/ulaken/20180216/436903/)

 映画関連以外のイラストも多くの反響を集めている。「スタバも良いけど、オチャバが欲しい。」と題して、日本茶が気軽に飲めるカフェを提案した昨年2月のブログ記事は共感を呼び、フェイスブックで1400回、ツイッターで1万9千回以上も拡散。その結果、佐賀県の地方創生プロジェクト「サガプライズ!」の一環で昨年、実現にこぎ着けた。嬉野市の茶農家らでつくるグループ「嬉野茶時」が3日間、六本木ヒルズで嬉野茶を提供した。

◆意識してきた「発信」

 自身のイラストそのものについては「俗っぽい。もうちょっとおしゃれなものが描きたいのに」「統一感がない。コンテンツの中身によってタッチは変えるが、自分のタッチが定まっておらず影響されやすいのもある」と控えめに評価する。「子どもの頃は漫画を見て描いたりしていたが、美術系の学校に行っていたらぼろかすだったと思う。自分は運良く、褒められる経験の方が多かった」とも。
 それでもフリーになってから約10年、業界を生き抜いてきたウラケンさんが「意識してやってきた」と語るのは「発信」だ。「自分から発信しないと仕事は増えない。ラーメン屋でも看板が出ていないとそもそも食べに行こうと思わないように、『イラストを描いている』と自分から言わないと誰にも伝わらないし、(相手が)発注もできない」。机でイラストを描いてばかりいるわけでもなく、名刺交換会などにも積極的に顔を出すという。

ウラケンさん初の単行本「侵略!外来いきもの図鑑 もてあそばれた者たちの逆襲」の表紙

 実は「侵略!外来いきもの図鑑―」も、ツイッターでの発信がきっかけ。他のイラストレーターによる生き物関連のイラストを目にし、ウラケンさんもアライグマやミシシッピアカミミガメ(通称・ミドリガメ)についてまとめたイラストを投稿したところ、編集者から声が掛かった。
 「絵をやりたいのであれば見せるしかない。フォルダにしまっていても世界は広がらないから」。10年目にしてつかんだ「代表作」は、世間のニーズをつかむCMの世界にも通じる感覚と、フリーになって身に付けた覚悟の結実でもあった。

 

 

クリエイターを目指すみなさんへ

「どう暮らしたい」 生きやすさのヒントに

 病気をきっかけに映画監督の夢を諦め、イラストやコンテという別のステージで輝きを放っているウラケン・ボルボックスさん。その経歴から、夢と現実に対するバランス感覚についても実践的なアドバイスが聞けた。
 ウラケンさんは自身の経歴について「夢よりも、性に合っていることと生活(の事情)を組み合わせたらこうなった」と語る。
 若者が進路を考える上でも「『何になりたいのか』とよく言うが、世の中には自分が知らない仕事もいっぱいある」と指摘。「夢もある程度重要だが、進路を考える時に『どう暮らしたいのか』『どう生きたいのか』も考えることで、少し生きやすくなるのでは。すでに社会人になった人であっても、それを模索する意味はあると思う」と語った。

 

 

 

●ウラケン・ボルボックス 1983年、鹿島市出身。鹿島高-日本大学芸術学部映画学科撮影録音コース卒。CM制作会社を経て、イラストレーター/漫画家/コンテマンに。広告、ウェブ、アプリのイラストレーションを中心に漫画、キャラクターデザイン、ロゴデザインなどを手がける。
 ウェブでの連載に映画イラストコラム「FILMAGA」、映画レビュー漫画「四コマ映画」があり、ウェブメディア「IRORIO」のイラストコラム「ウラケンの聞き流シンパシー」は、25日の「最終回」まで2年余り続いた。外来種をイラスト・漫画で紹介する初の単行本「侵略!外来いきもの図鑑もてあそばれた者たちの逆襲」が、2019年2月に発売された。

ウェブサイト http://ulaken.com/
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