メンタルヘルスの不調(例えば、うつ病)で長期休業していた労働者の復職を会社側が支援するにあたって、いつ、どこの職場であっても適切な対応がとれるように、関係者の役割や活動の基本を、社内の実情に即した形であらかじめルール化しておく必要があります。これは「職場復帰支援プログラム」と呼ばれます。公務員の場合、病休(3カ月まで)。それを過ぎると、休職(3年まで)となります。民間企業では、もっと短いでしょう。休職の場合、同じ病名であれば、休んだ期間は積算されることになりました。そもそも、うつ病を含めた精神障害の原因はいまだ不明。服薬しながら十分な休養をとり、自然寛解を祈りながら、主治医と産業医は本人と家族の期待を踏まえた上で、復職のタイミングを待ちます。しかし、現実はそううまくいきません。試し出勤、リワークなど、さまざまな工夫がなされますが、休みが3カ月を過ぎると(休職に入ると)、職場の仕事が円滑に進まなくなるため、上司は臨時採用の方を雇用します。これも仕方がない現実です。つまり、業務に支障が生じないように配慮します。いつ回復するのか、わからない精神疾患。待つことが困難な多忙な現実社会と人員削減を推し進める日本の政策。

 ここで、メンタルヘルス不調者の最大の悩みは、失われた時間による人間関係の修復です。病気はある程度回復しても、元の職場では周囲との人間関係がすでに薄れており、その修復にはかなりの困難を要します。取り戻せない信頼関係、職場へ入りづらい雰囲気、長期欠勤に伴う自信喪失、家族の期待など、重たい荷物を抱えながらの朝の出勤。うつ病では、ただでさえ、朝方の気分不良が伴うため、「元気に出勤」というシナリオを思い浮かべることは難しい。だからこそ、同僚の思いやりと理解が不可欠と感じています。

 働き方改革が問われていますが、時間外労働に焦点が当たりすぎていて、休職・復職の問題に関して、もっと光が与えられることを望みます。家族を支えなければならない父親の宿命に配慮して。

(佐藤 武 九州大学キャンパスライフ・健康支援センター教授、副センター長、統括産業医)

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