政府は天皇陛下の即位に伴う「即位礼正殿の儀」に合わせ、政令恩赦を実施した。罰金刑となり、納付から3年以上経過したことを条件に罪の種類にかかわらず、制限された資格を一律に回復する「復権」が大半を占め、対象は約55万人。懲役刑や禁錮刑は含まれず、刑の言い渡しの効力を失わせる大赦や刑期を短くする減刑は行わない。

 国の慶弔に合わせた恩赦は1993年の天皇陛下と皇后さまのご結婚以来26年ぶり。罰金納付から3年未満のため政令恩赦から漏れた人や、重病で刑の執行が長期間停止されている受刑者について、法務省の中央更生保護審査会が本人の申請を基に個別の事情を審査する個別恩赦の一つ、特別基準恩赦も実施する。

 政府は「改善更生の意欲を高め、社会復帰を促進できる」と意義を強調する。とはいえ、恩赦は奈良時代からあり、もともと特別の恩典により罪を赦(ゆる)して慈悲を示すという権力者の統治手段だった。三権分立が確立した今では裁判で決まった刑罰を行政が覆すことになり、「司法への介入」という批判を免れない。

 また反省や更生の程度を考慮することなく、まとめて復権を認める政令恩赦の仕組みに疑問が指摘され、被害者重視や厳罰化という時代の流れにもそぐわない。実施ありきで制度を維持していこうとしても、もはや国民の理解は得られない。

 恩赦は政令恩赦と個別恩赦に分かれる。内閣が政令で対象の罪や刑の種類を定め広く一律に行うのが政令恩赦で、大赦と減刑、復権がある。中央更生保護審査会が個別に審査する個別恩赦は特別基準恩赦のほかに慶弔に関係なく、普段から行っている常時恩赦もあり、特赦と減刑、刑の執行免除、復権につながる。

 大日本帝国憲法で恩赦は天皇の大権事項だったが、現行憲法は内閣が決定し、天皇が認証すると規定。昭和から平成への代替わりに伴う政令恩赦は2回あり、89年の昭和天皇大喪で1千万人以上、90年の上皇さま即位で約250万人が対象となった。それぞれ約1万5千人と約5千人、公選法違反者が含まれ「政治恩赦」と批判を浴びた。

 過去に恩赦で死刑が無期懲役に減刑された例もあるが、近年は被害者や遺族への配慮から比較的軽微な事件で罰金刑を受けた人の復権が中心になり今回、対象も大幅に絞り込まれた。大半は道交法違反者で、罰金納付から5年間は医師などの資格を得られないことがあるが、復権すると、その時点で制限が解かれる。

 停止中の公民権が回復される公選法違反者も過去2回の政令恩赦と比べると、はるかに少ないとはいえ、430人程度が見込まれている。一方で、恩赦と制度は異なるものの、政令による復権に合わせ実施できる国家公務員の懲戒処分免除は見送られた。学校法人「森友学園」を巡る決裁文書改ざんで処分された元財務省幹部が救済される可能性があり、国民の反発を招く恐れがあった。

 恩赦には「誤判からの救済」という目的もあるが、年間30件前後の常時恩赦で十分対応できると専門家はみる。批判や議論を避けるため、政府は水面下で準備を進め、直前まで実施方針を公表しなかった。その後、対象者の概数は示したが、検討過程は明らかにしていない。慶弔時の恩赦を巡って、議論に正面から向き合う必要があろう。(共同通信・堤秀司)

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