パーティーにスピーチはつきものだが、日本と外国では勝手が違う◆日本は開宴冒頭に行われ、しめくくりは厳かに「乾杯!」。一方、乾杯という行為に権威を置かないフランスではデザートを食べながらゆっくりスピーチを聞いて、最後に乾杯して席を立つそうだ。〈肩の凝ることは先に済ませ、あとは寛ごうと考えるか、あるいは楽しみを最後までとっておこうと考えるかという違い〉と、その国民性を元外交官の矢田部厚彦さんが書き留めている◆儀式にはその国の価値観やものの考え方が投影する。きょう天皇陛下が国内外に即位を宣明される「即位礼正殿の儀」が行われる。約180カ国から参列する賓客に平安装束の皇室行事はどう映るだろう◆昭和から平成への代替わりの時には、宗教色の強い戦前の儀式を踏襲することに憲法の国民主権や政教分離に反すると批判もあった。今回はしかし、皇室への親近感の高まりからか、ほとんど論じられることがなかった。豪雨や台風被害でそれどころではなかった、と言うべきかもしれない◆祝賀パレードは延期されたとはいえ、平成の皇室になじんだ国民には、一日も早く両陛下に被災者を直接励ましていただきたいと願う気持ちも強い。そんな期待にどう応えていかれるか。令和の新しい天皇像が垣間見えるような儀式の日になればいい。(桑)

 

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