20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、米交流サイト大手フェイスブック(FB)が発行を目指す暗号資産(仮想通貨)「リブラ」に対する規制強化を打ち出した。

 金融政策への影響やマネーロンダリング(資金洗浄)などへの悪用が懸念されるためだ。確かに現在、FBが明らかにしているリブラ計画の限りでは、不安は否めない。G20の対応はその意味で妥当と言える。

 しかし、リスクがあるからといって、将来の経済社会に画期的な利便性をもたらす可能性をすべて打ち捨ててしまえば、デジタル技術の革新への機運はそがれてしまう。多少時間がかかっても、市場や経済活動の混乱を避けつつ、より多くの人々が気軽に金融サービスを享受できる仕組みを目指したい。規制一辺倒ではなく、バランスを取った対応が求められる。

 今後は、今回のG20の議論を、世界の金融システム監視を担う金融安定理事会(FSB)が引き継いで規制に関する具体策を検討し、2020年7月に、各国監督当局の規制の土台となる最終報告を提示する。

 FBは同年前半のリブラ発行を目指しているが、世界の主要国が抱くすべての懸念を、それまでに解消できるとは考えにくい。発行時期にこだわることなく、技術や安全対策などで改良を重ね、積極的な情報開示などを利用して透明性の向上を図っていかなければならない。

 リブラは、データの改ざんが難しいとされるブロックチェーンの技術を使い、スマートフォンで送金や決済といった金融サービスを安価に提供する事業だ。価格が乱高下し混乱を招いたビットコインなどの仮想通貨との違いは、価値をドルやユーロ、円などの法定通貨で裏付けし相場の安定化を図っている点だ。

 これが実現すれば、一般の人々向けの金融サービスが向上するほか、銀行口座を持てない多くの人々に、スマホを通じて金融サービスを提供することが可能になるとFBは説明している。既存の通貨制度や金融システムでは対応が難しい問題を、デジタル技術を活用して解決しようという発想だ。

 しかし、その過程でリブラが世界で広く普及すれば、現在の経済・金融秩序はどうなるだろうか。金融インフラが十分整備されていない途上国では、安定性が高いリブラが自国通貨に置き換わる可能性もある。そうなれば、従来の金融政策や財政政策が機能不全に陥ってしまいかねないとの当局者の懸念も当然だろう。日進月歩するデジタル技術の世界だ。悪用をたくらむやからが、リブラ陣営の技術水準を上回れば、テロ資金などに活用される恐れも否定できない。

 リブラが目指す市場での立ち位置や金融サービスのどの部分を担うのかといった、イメージも重要だ。リブラは既存の法定通貨と敵対するのか、それとも、互いに補完し合える関係に発展できるのか。FBは、目指すサービスの内容と、当局が行う政策の関係を整理した上で、具体策を提示するべきだろう。各国の当局者も規制で縛るばかりではなく、制度設計に積極的に関わったらどうだろうか。

 画期的な技術革新には混乱が伴うのは歴史が教えるところだ。拙速を避け官民で力を合わせたい。

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