佐賀藩2代藩主鍋島光茂はよほどの大食漢だったらしい。元禄時代の江戸のうわさ話を集めた『元禄世せ間けん咄ばなし風聞集』によると、朝夕、米の量を測らせて一度に七百目(2・6キロ)を食べた、というからすごい◆諸富の寺井津から船で長崎へ出かけ、到着早々食事をすることになったのだが、あいにくの大風で随行してきた調理担当の御台所船が到着しない。仕方なく米だけ炊かせて1升5合(2・25キロ)をたいらげた、と書かれている◆そんな殿の治世なら、食べ残しが問題になることもなかったろう。環境省の推計では、まだ食べられるのに廃棄される「食品ロス」は今や年間643万トン(2016年度)。恵方巻きやクリスマスケーキなどの売れ残りは1割程度にすぎず、家庭の食べ残しが45%と最も多い◆人間はゆっくり時間をかけて食事を共にすることで家族を形成し、共感する力や互いを信頼し団結することを体得したのだと、霊長類学者の山極寿一さんは指摘する。そんな手間暇のかかる食卓の光景が消えつつある時代に、「もう食べきれない」とたやすく捨て去る風潮は地続きに思える◆食品ロス削減推進法が今月から施行された。まだ食べられる食品を子ども食堂などに提供する「フードバンク」の取り組みが県内でも始まっている。食で人がつながる、その意義を見つめ直したい。(桑)

 

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