台風で海の風をかぶったせいか、庭のモミジに元気がない。枝の上あたりの葉先が不格好に黄茶けて、鮮やかな紅葉は望めそうもない◆昔から植木職人の間では、モミジの盆栽を色よく紅葉させるため、葉に砂糖水を霧吹きでかける「秘技」が知られていたという。植物学者の塚谷裕一さんの著書に教えられた。しょっぱい塩分を含んだ風が葉を傷めるのなら、反対に甘い糖分でよく育つのも道理かもしれない◆そもそも紅葉がどうして起こるか、実はよくわかっていないらしい。「葉を緑色にする色素クロロフィルが壊れ、赤い色素アントシアニンができるから」というのが一般的な解説だが、それは〈目に見えて感じられる色の変化を、その色素の名前で言い換えただけ〉と塚谷さん。なぜ赤い色素ができるのか、確かな答えは見つかっていない◆人間界にも不思議な変化がしばしば起こる。来年の五輪のマラソンと競歩が札幌で開催されそうな雲行きである。猛暑による選手の健康や安全面に配慮しての計画変更はやむを得まい。ただ、そんな大がかりな変化を「東京五輪」と言い換えてよいものか◆巨額の放送権料に支えられる五輪は、欧米で人気のスポーツ中継がない時期に日程が組まれるとか。「選手第一」といいながら、厳しい真夏に開催されるナゾは、わかりやすい商業主義である。(桑)

 

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