〜母乳育児にこだわり過ぎないようにしましょう〜

 2019年3月に“授乳・離乳の支援ガイド”が改定されました。その中で、妊婦さんの43%は“ぜひ母乳で育てたい”50.4%は“母乳が出れば母乳で育てたい”と、実に90%以上が母乳による育児を希望していることが報告されています。母乳保育には大きなメリットがありますので、赤ちゃんにとって喜ばしい結果と考えられます。一方で、実際に授乳を開始した後、77.8%の母親が授乳に関して困ったことがあると回答しており、最も多いのは母乳の不足に関連した事項でした。“完全母乳で育てなければ”と思い込むあまり、それがストレスになるのは良いことではありません。今回は母乳のメリットとデメリットを考えてみます。

 母乳の最大のメリットのひとつは、お母さんと赤ちゃんの絆が強くなることです。乳房から直接哺乳することによるお母さんとの自然な愛着形成は、その子の発達に将来にわたって大きな良い影響を与えます。機能と栄養の観点からみると、初乳(最初数日間の乳を初乳といいます)には赤ちゃんを腸管の感染から守る物質が大量に含まれています。また、母乳は消化しやすく胃腸にやさしいミルクです。経済的で調乳の手間が不要であることもメリットです。

 ただ、牛乳から作られた育児用ミルク(人工乳)に比べて、鉄分、ビタミンD、Kなどいくつかの必須の栄養素が少なめであるなどのデメリットもあります。でも、母乳が生後数カ月間の赤ちゃんにとってほぼ完全な栄養であることは間違いありません。一方で、お母さんの体調に影響を受け、結核や治療が困難なウイルス感染症にかかっていると赤ちゃんに病気をうつす可能性があるという大きなデメリットもあります。

 現代社会は種々の理由で母乳による育児が難しいことがあります。母乳育児のメリットは今回述べたことだけに留まりませんが、市販の育児用ミルクにも利点があります。母乳による育児にこだわらずに、育児用ミルクも上手に利用してストレスの少ない育児をすることが、母児共にとって大事なことでしょう。

 

浜崎 雄平(はまさき ゆうへい)
佐賀整肢学園 からつ医療・福祉センター顧問。佐賀大学名誉教授。
1948年、鹿児島県日置市生まれ。九州大医学部を卒業し、テキサス大やオクラホマ大研究員などを歴任。
84年から佐賀医大(現佐賀大学医学部)小児科講師として勤務し、00年に同大小児科学教授就任、09年から医学部長を兼任する。
14年から現職。専門分野は小児の呼吸器/循環器疾患,アレルギー疾患。

 

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