「国策と地方」という命題で本紙シリーズ連載が始まって間もなく5年になる。第1弾は2014年の衆院選時、玄海原発の再稼働問題だったが、諫早湾干拓事業、九州新幹線長崎ルート、そしてオスプレイの佐賀空港配備と、どれをとっても着地点は見えず、むしろ混迷は深まるばかりだ。

 利害は隣の長崎県も絡んでいて「国益」に加え「県益」を考えると迷路に入り込んでしまう。さらに佐賀県内でも温度差がある。

 たとえばオスプレイの佐賀空港配備。県民世論調査では立地地の佐賀市などは反対する人が多い。一方、唐津市ではお荷物といわれた県営空港の活用策として配備を容認、歓迎する声を聞く。

 新幹線はどうか。国・与党・JR・長崎県がタッグを組むフル規格推進派に対し、「佐賀県がフル規格を求めたことはない」と頑と受け付けない山口祥義知事。フル規格の新駅整備が進む嬉野、武雄市に対し、並行在来線の扱いや駅周辺整備に懸念を抱く佐賀市。そんな構図が鮮明になっている。

 そこで気になるのが、全県的な論議に至っていないことだ。

 山口知事はフル規格に反対する理由として「莫大(ばくだい)な財政負担にとどまらず、在来線のあり方、ルート、地域振興などの問題が複合的に横たわっている」と言う。

 国交省の試算でフル規格による建設費は約6200億円で、佐賀県の負担は約660億円。戦略施策へのしわ寄せはもちろん、各方面にはね返ってくる。

 着工時、新鳥栖―武雄温泉間はフリーゲージトレインを導入し、在来線をそのまま使う予定だった。しかしフル規格となると佐賀駅は新駅が必要で、ルート選定や用地買収など沿線すべての市町の地域計画にさまざまな影響を及ぼす。

 佐賀県にとっての「費用対効果」が問われる中、経済人らからルート変更案が浮上する。その一つが「佐賀空港沿線構想」である。

 新鳥栖駅から九州新幹線・筑後船小屋駅まで南下し、九州佐賀国際空港を経由して佐賀平野を横切り、武雄温泉駅と結ぶ。新幹線と空港を連結することによって、国内、海外との広域ネットワークの拠点とし、アジアを中心としたインバウンド、物流に対応する。さらには南北問題といわれる福岡県南部の振興にも寄与する狙いだ。

 1973年、全国新幹線鉄道整備法に基づき長崎ルートなど整備新幹線5路線が決定されて46年。大都市と地方を結ぶ新幹線を取り巻く状況は変わり、人口減少期に入る一方、インバウンドなど新たな人の流れが生まれている。

 工費や工法、長崎への時間短縮など課題はある。ただフリーゲージトレインが挫折した今、こうした試案を含め、広く全県的な視点で新幹線のありようを論議する意義は十分あるはずだ。(吉木正彦)

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