JAXAの仕事について説明する松尾尚子さん=鳥栖市民文化会館

 幕末佐賀の藩校・弘道館を現代に再現した県の事業「弘道館2」の小学生向け夏休み特別講座が8月、鳥栖市民文化会館で開かれ、県内の小学生や保護者ら約260人が参加した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の松尾尚子(なおこ)さん(41)=東明館高校出身=が、子ども時代や宇宙ステーションの話などを通して、宇宙の魅力について語った。その模様を紹介する。

【講演】宇宙に夢中

 松尾さんは、国際宇宙ステーション(ISS)での実験や広報として、ISSに長期滞在した日本人宇宙飛行士の活動を支えた。幼い頃から宇宙が大好きだったという松尾さん。「なんこれ?」と不思議に思う気持ちが松尾さんを突き動かしてきた。

★「分からない」が好奇心刺激

 宇宙に興味を持ち始めたきっかけは、小学2年生の時。75年に1度観測することができるといわれるハレー彗星が、地球に接近すると知りワクワクした。宇宙図鑑に熱中し、いろんな惑星の形を見ては「なんで? どうして?」と不思議な気持ちが沸いた。宇宙が“無”から生まれたことを知った時は、心をつかんで離さなかった。「わからない方が楽しい。宇宙にとりつかれた」。宇宙が松尾さんの好奇心を刺激した。
 大学院では、地球惑星科学を専攻。2002年にJAXAの前進、宇宙開発事業団に入社した。

★ISSで実験

 日本、アメリカ、ロシアなど計15カ国が参加しているISSは、地上から400キロ上空にあり、1秒間に8キロの速さで地球の周りを回っている。地球を1周するのにかかる時間は90分で、45分おきに昼夜が入れ替わる。大きさはサッカー場と同じくらいだ。その中でも、人間が生活できる空間はジャンボジェット機程度という。
 2011年6月、古川聡宇宙飛行士がロシアのソユーズ宇宙船でISSへ飛び立った。松尾さんは、古川さんがISSに滞在した約6カ月間、広報担当として宇宙での長期滞在を支えた。
 太陽が照りつける無重力環境のISSで、宇宙飛行士らが行う仕事は「地上とは違う条件を使った実験」が中心だ。ISSにある日本の実験棟「きぼう」では、タンパク質をきれいに作る実験や、無重力空間で植物を育てる実験、医師である古川さんの特性を生かした医学的な実験も行われた。

宇宙の面白さを語るJAXAの松尾尚子さん

★宇宙での生活

 人間は、地上で立ったり歩いたりしているだけで筋力が鍛えられるが、無重力空間の宇宙では常に体が浮いているため、筋力の低下も早い。宇宙では、体が浮かないように靴を床に貼り付けた状態で、毎日2・5時間の体力トレーニングが行われる。
 就寝時は寝袋に入り、立ったまま眠る。
 食べ物は、浮遊して鼻や目に入る恐れがある、のりや唐辛子など細く散らばるものは宇宙に持って行くことができない。
 人間が生きていくために必要な空気は、水を分解して生成する。 水は地球から持って行くものもあるが、それだけでは足りないため、二酸化炭素を集めてそこから取り除いた水分を使用したり、特別な装置を使って、尿から水を作ったりして補っている。

★地球の今を知る

 現在、約46億歳の地球。JAXAでは、人の体調を診るのと同じように、地球のことを調べている。衛星からカメラや電波を使用して地形の変化を観察し、すばやく環境の変化や問題点に目を向ける。紫外線を吸収するオゾン層が減っているのも、人工衛星から発見することができた。また、アマゾンの森林を観察することで、違法伐採をいち早く見つけることにつながった。松尾さんは「地球の“今”を知ることで、未来を考えることができる」と話す。

★松尾さんにとって宇宙とは

 「宇宙での、1日目、2日目は自分たちの国を指す。3日、4日目になると、自分たちの大陸を指すようになる。5日目以降は、たった一つの地球に気づく」。1982年にスペースシャトルで宇宙旅行に出掛けたサウジアラビアの王様の言葉だ。松尾さんはこの言葉を紹介し「宇宙は新しい視点を、広い視野を与えてくれる。ワクワクしながら変わる自分にドキドキする。そんな存在」と目を輝かせた。

会場に置かれた人工衛星の模型に見入る児童

 

【実験】

◆空気の力を見てみよう!

 マシュマロを漬物用の圧縮容器に入れて、容器中の空気を抜くとマシュマロはどのように変化するか。

 結果  容器中の空気を抜くと、マシュマロは膨らんだ。空気は周りを押す力がある。マシュマロの外側の空気を抜いたことで、マシュマロ中の空気が外を押す力だけになったため、マシュマロは大きく膨らんだ。

 

はかりを落として、無重力の実験をする関係者

◆無重力を見てみよう!

 はかりにボールを乗せて、高いところからはかりを落下させる。ボールを乗せたはかりの目盛りは250グラムを指している。落下させると重さはどのように変化するか。
 結果  250グラムのボールを乗せたはかりを落下させると、落下している間は無重力状態になり、はかりの目盛りは0を指す。
 国際宇宙ステーションが地球の周りを回っているときも、地球の重力を受けている。ステーションは、地球の中心に向かって落ちつづけている状態で、地球上に落ちないのは、国際宇宙ステーションが秒速8キロメートルの速さで進みながら、地球の周りを回っているためだ。

 

会場に展示されたロケットの模型に興味津々の児童
手を挙げて質問する子どもたち

Q&A

Q.宇宙放射線を浴びすぎたらどうなるの?
A.被ばく量は常に監視されている。時々、太陽が爆発を起こすと大量の放射線が降り注ぐ。そのときは、鉛でできた壁に隠れたり、水タンクの陰に隠れたりして放射線から身を守っている。

Q.仕事をしていて楽しいと感じる時は?
A.宇宙での実験を企画して、その実験が成功し、未来に役立ちそうだと世界に認められたとき。

Q.宇宙に空気がないのはなぜ?
A.空気は重力で地球に集められている。地球上でも重力が弱いところでは、実は空気は少しずつ抜けている。地球の重力が空気を引っ張っている。

Q.国際宇宙ステーションの温度はどれくらいですか?
A.25~26度くらいの快適な温度に保たれている。

Q.国際宇宙ステーションに滞在中、入浴はどうしてるの?
A.ぬれタオルで体を拭いている。以前、シャワーが使用できたときもあったが、水滴が原因で機材が故障することがあるので、シャワーを使用した後、水滴を拭きとる作業に2時間ほど要していた。そのため、シャワーは廃止された。

 

佐賀弁でメッセージ

 「なんこい、どがんなっとーと? がばいおもしろかね!」。不思議に思ったことが大事。心躍る何かを見つけたら、楽しかたい。ワクワクば大事にせんね!

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◆「弘道館2」とは◆ 幕末佐賀の藩校・弘道館を現代に再現した県の人材育成事業。県内の高校生や大学生を対象に夢や可能性を広げるきっかけをつくろうと、さまざまな分野の最先端で活躍する県内にゆかりのある講師を招いて講義を行っている。コーディネーターは佐賀市出身で電通の倉成英俊さん。26日、「大人の弘道館2」と題した「佐賀の日本酒学」を学ぶ講座が、小城市の天山酒造で開かれる。講師は窓乃梅酒造社長の古賀釀治さん、天山酒造社長の七田謙介さん、古伊万里酒造代表の前田くみ子さん。受講対象は10月26日時点で20歳以上で定員30人。応募期間は16日まで。申し込みはウェブサイト、http://www.kodokan2.jp。問い合わせは事務局、0952(40)8820。

 

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