「カープ一筋28年。最後の大きな仕事だと思い、信念を持って全うしたい」―。2014年、プロ野球・広島東洋カープの指揮を執ることになった鳥栖市出身の緒方孝市監督。引き締まった表情で抱負を語っていた◆それからの快進撃は言うまでもない。1年目こそ4位に終わったものの、翌16年には球団25年ぶりとなるリーグ優勝に導いた。以降、3連覇を達成しカープの黄金期を築いた。ただ心残りは日本一に届かなかったことだろう◆今年5月、84歳で亡くなった父親の義雄さんは日本シリーズを前にした昨秋の本紙の取材に「日本一になってくれんと死なれんよ」と緒方監督に冗談ぽく声をかけたと話していた。「日本一」。口数の少ない緒方監督だが、胸に秘めた思いは人一倍だったはずだ◆その悲願が遠のくことへの焦りがあったのか。20年ぶりの11連敗を喫した7月、選手を平手でたたいて厳重注意処分を受けたことがあった。試合中の選手の怠慢に映る走塁に怒ったという。緒方監督は「何があってもこういう行為は駄目」と謝罪した◆体調を崩し点滴を打ちながら指揮を執っていたという緒方監督。きのう退任を発表した。「厳しく接しながら選手はよくついてきてくれた」。悔しさも自責の念もあったに違いないが、選手やスタッフへの感謝を忘れない誠実さが印象的だった。(丸)

 

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