「病気はないが、店を閉めたらまず太らんといかんね」と笑う2代目店主の松尾誠さん=白石町の「味亭 美柳」

 佐賀県白石町福田で60年以上にわたり親しまれてきた食堂「味亭 美柳(みりゅう)」が、30日で店を閉じる。体力仕事の辛さと慢性的な人手不足から、2代目店主の松尾誠さん(69)が継続を断念。「これからどこに行ったらいいのか」などお客さんの惜しむ声をかみしめている。

 1958(昭和33)年、松尾さんの母・キヨさん(故人)が駄菓子屋として創業した。当時、店の前にあった柳の木から店名を付けた。うどんやいなり寿司などを提供する食堂へと変化し、73年には営業マンを辞めて帰ってきた松尾さんが継いだ。

 板前を雇って和食・仕出し店にしたり、昼の営業をやめて居酒屋にしたりと、業態を模索した時期も。結局は大衆食堂に落ち着き、昼は外回りの営業マンに、夜は地元の家族連れなどに愛される店になった。キヨさんが始め、店の名物とされる「ちゃんぽん」は、和食店の時期に一時休止した後、だしを丁寧に取る現在の味で“復活”した。

 ただ次第に「いろいろなメニューを作る大衆食堂では、料理人が継続して働こうとしない」と人材確保の難しさも感じるようになり、数年前から「立て続けに料理を作るのがきつくなった」と松尾さん。厨房は主に次男の圭輔さん(35)と2人で切り盛りしており、「店を継がせても支える人がいない。私の代で終わってもいいと思った」とつぶやく。

 年内いっぱいの営業も考えたが、消費税の増税を踏まえ、9月末に前倒しした。お客さんから寄せられる温かい声に、松尾さんは「本当にありがたい」と笑みをこぼす。「店のために地域行事も断ってきた。これからできることがあれば恩返ししたい」と第二の人生を見据える。

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