「オレが好きなのは、ヤキ、ヤツ、それからガンだ」「何だい、それ?」「焼き豆腐と八つ頭とがんもどきだよ」。落語「替り目」は、酔っ払って帰った亭主が酒を飲み直そうと、女房を横丁のおでん屋へ走らせる。「早く買ってこい」と口汚く送り出して本音がポロリ。「世の中に女房ぐらいありがたいものはないねぇ……あ、まだいたのかよ」◆暑さも日ごと和らいで、コンビニにおでんが並ぶ時季になった。このところ、おでん種の原料となる魚のすり身の輸入価格が高騰しているという。豆腐類や里芋に目がない落語の亭主には無用の心配だろうが、お手頃な練り物が手に入りにくくなりはしないか◆主原料のスケトウダラは北海道の不漁で米国産に頼ってきたが、欧米や中国で健康志向の高まりから魚の消費が増え、価格はずっと右肩上がり。代替原料を調達していた東南アジアでも日本の練り物のおいしさが広まり、輸出国から消費国に転じたのも原因らしい◆一方、練り物の世界最大の消費国とされる日本だが、若者に敬遠され心なしか売り場も小さくなっているような。良質な練り物産地の県内でも、業者の苦境が伝えられる。消費拡大が何よりの価格安定策である◆死ぬ前に何が食べたいかと聞かれたら「うちのおでん」と答えよう。カミさんには内緒だが…あ、まだいたのかよ。(桑)

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