8月28日の豪雨の際、3機全ての排水ポンプを止める「運転調整」が行われた高橋排水機場=武雄市朝日町

 停滞した線状降水帯がもたらした激しい雨が収まり始めた8月28日午前6時すぎ、国土交通省武雄河川事務所は武雄市朝日町の高橋排水機場のポンプ3機を停止した。六角川の新橋観測所(同市北方町志久)の水位が、堤防が耐えられる最高の水位(ハイ・ウオーター・レベル=HWL)に達したため、堤防決壊や川があふれることを防ぐためにポンプを止める「運転調整」に入った。

 ポンプは、排水機場に集まる河川などの水(内水)を強制的に六角川(外水)に流し込んでいる。運転が止まると内水がたまり、町は冠水する(内水氾濫)。ただ、今回の豪雨では運転調整以前に冠水していた。排水機場近くの女性(80)は「午前5時ごろには1メートル以上の水が来ていた。気づいて床上まであっと言う間だった」と話す。

 ポンプはおよそ3時間後に再稼働したが、周辺の川の水位は下がらなかった。排水機場の北西約400メートルにある高橋川の水位は、午前3時が約1・2メートル、ピーク時の7時が約3・6メートル、ポンプ稼働後の10時すぎでも3メートルを超えている。武雄河川事務所の的場孝文副所長は「排水ポンプを使っても内水の水位を下げられないほどの大量の雨だった」と推測する。

 運転調整は高橋排水機場だけでなく、新橋観測所の上流にある7カ所の排水ポンプで行われた。牛津川でも砥川大橋観測所(小城市牛津町)が午前5時24分にHWLを超え、17カ所を5時間ほど止めている。

 高橋排水機場は1997年に完成した。3機のポンプは「学校のプールを8秒で満杯にする」能力を持ち、水害常襲地だった高橋地区の浸水はその後軽減されていた。だが、今回の被害は「排水機場がなかった1990年の豪雨の時を上回る」という声が多く聞かれる。高橋地区や隣の北方町では29日朝まで水が引かなかった。

 浸水家屋は武雄市全体で1500棟を超える。うち床上浸水が3分の2に上ることが被害の大きさを示している。原因は排水機能を上回る雨。北方町では28日の午前3時から3時間に233ミリの猛烈な雨を記録、27日の降り始めから雨が収まった28日正午までの総雨量は480ミリを超えた。さらに、有明海の満潮(午前7時58分=藤津郡太良町大浦)が重なり、早期の排水を妨げた。

 対策はあるのか。的場副所長は「大規模水害の犯人は1人ではない。六角川流域全体の総合的な治水対策が必要」という。「本川、支川を含めた河川改修」「ため池や遊水池整備」「排水機場の整備・増強」などを挙げると同時に、住民もハザードマップなどで危険を把握し、自らの身を守る意識を高めることが不可欠とする。

 六角川には大規模な調整池整備計画がある。武雄市東川登町の採石場のくぼ地を活用して広さ約16ヘクタール、貯水容量350万~450万立方メートルの池を造る計画だ。1990年7月豪雨の被害と比べて浸水面積は半減する効果を見込むが、本年度から始まった整備計画の期間は約30年。調整池整備以外の対策も急務だ。

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