上映会に向け、機器などを入念に準備してきたみないろ会のメンバー=佐賀市松原のシアター・シエマ

 映画の冒頭2分間、物語の中心となる男性が映し出されるシーンがある。「黒のパーカーに黒いズボン。白いヘルメットをかぶった若い男性。家族連れと談笑している」。8月24日に開かれた音声ガイド付き映画の上映会では、男性の服装を分かりやすく伝えた。

■説明、多過ぎても

 県内で初めてガイドを制作した「みないろ会」。発足のきっかけになったのは、2年前にシアター・シエマで県が主催したバリアフリー映画の上映会だった。周知が行き届かず、県視覚障害者団体連合会の森きみ子会長(64)=みないろ会会長=や重松恵梨子シエマ支配人などが「本当に必要とする人に届いているのだろうか」と感じたという。その後「障害のあるなしにかかわらず、映画を見に来てほしい」とバリアフリー映画制作の話が持ち上がり、昨年4月にみないろ会を設立。日常的にバリアフリー映画を見られる環境づくりを目指す。

 発起人には森会長や重松支配人など、福祉団体のトップや映画関係者などが名を連ねた。ただ、ガイドの制作は初心者ばかりだった。

 登場人物の服装や表情、動き、場所、画面に映る字幕…。視覚的な情報を補い、会話や音楽、ナレーションの“隙間”に言葉を差し込む。限られた時間での状況説明に心を砕き、差し込める言葉の文字数をカウントしては短い言葉に置き換えていった。「秒数との格闘だった」。制作メンバーの一人、小城市の南奈々さん(39)は試行錯誤の過程を振り返る。

 視覚障害者を対象にしたモニター上映をしたり、ガイド制作のプロを招いたりして修正を重ねた。冒頭シーンの服装の詳細な説明は、視覚障害者の意見を取り入れたものだ。

 「物音を聞けば分かる」。女性がリモコンを置くシーンでは、ガイドを入れていたが、視覚障害者の指摘で削除した。説明が多過ぎても「親切なガイド」ではなくなる。「気付かない視点だった」と南さん。映画の中心となる男性が父親の墓参りで涙を浮かべるシーンでは、鼻をすする音が入っているため、鑑賞者に想像を委ねた。

■年1作のペースで

 視覚障害がある鳥栖市の西依(にしより)政雄さん(69)はモニター上映会などに参加し、本作を鑑賞するのは上映会が3回目だった。物語の説明が少ないドキュメンタリーは一般的に理解しにくいとされる。細部で案内してほしかったシーンはあるが、「ガイドの言葉が短く、理解しやすかった」と評価した。

 全国では約20のボランティア団体がガイドや字幕制作を担っている。九州ではみないろ会と活動歴約20年を迎えたエイムing(福岡県)だけで、今後は互いが制作した台本を交換するなど連携していく。みないろ会は、年1作の長編作品のガイドや字幕の制作、出張上映会に取り組む。

 「初めて制作して感覚をつかんだと思う。それを生かしながらスキルアップをしていきたい」と森会長。誰もが楽しめる県内のバリアフリー映画作りは始まったばかりだ。

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