災害時は「自助」「公助」とともに、「共助」が欠かせない。8月の豪雨でも各地域で助け合い、支え合いの光景が見られ、今も生活再建に向けた支援が続いている。人間関係が希薄になっているといわれるが、「世の中、捨てたものではない」と感じた人も多かったのではないか。

 ただ、そうは言いながら、普段の暮らしの中では結びつきが強すぎると煩わしく思う人もいる。昔から住んでいる人、新しく移り住んだ人など、それぞれに地域コミュニティーのあり方に対する考えの違いもある。濃密な関係を歓迎する人ばかりではなく、悩ましいところだが、いざという時には「共助」が機能する関係は保っていたい。

 そのための程よい距離感とはどんなものだろうか。隣近所に限らず、相手との間合いの難しさを感じることはままあるが、永六輔さん(1933-2016年)の“ご近所感覚”を紹介したい。

 永さんの実家の向かいに、口うるさい浪曲師が住んでいた。小学1年の時、父親に「明日から家の前を掃除しろ」と言いつけられた永さんは、張り切って浪曲師の家の前まで掃いた。すると、浪曲師から「余計なことをするな」と叱られ、翌日は道の真ん中で掃除をやめたという。

 それを見た浪曲師、「この掃除の仕方は気に入らねえ。もうちょっと、おれんちの方へ寄れ。おれもちょっと、おまえんちの方に寄る。そうすると、道の真ん中は2人で掃除したことになる。よそから来た人にきれいな所を歩いてもらおう」と諭したそうだ。

 永さんは「お互いがちょっと相手に寄る。寄りすぎちゃいけないが、重なっていく部分がどうしても必要だ」と、ご近所感覚の大切さを説いた。岩波書店で永さんの新書シリーズを担当した井上一夫氏は「彼のネットワークは、このご近所感覚で貫かれていた」と回想。絶妙な距離感のおかげで、心地よく付き合えたと感謝する。(『伝える人、永六輔』集英社)

 私たちは地域で、職場で、いろんな人と接して社会生活を送る。無神経に踏み込みすぎてはいけないが、重なる部分を大事にする気持ちが心地いい関係につながり、「共助」の下地も強くする。永さんのご近所感覚を参考に考えてみたい。

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