国営諫早湾干拓事業(長崎県)を巡る請求異議訴訟の13日の上告審判決は、開門を命じた2010年の確定判決について「時の経過で変動する自然環境や社会環境を前提にした不確実な将来予測に基づく特殊性、暫定性がある」と指摘した。「対立する諸利益を考慮した結果が(2010年と)異なることもあり得る」と踏み込み、福岡高裁に差し戻し、長い期間が経過した現在でも開門を強制することが適当か審理し直すよう求めた。

 確定判決は「確定から3年以内に防災上やむを得ない場合を除き、5年間開門せよ」と命じた。最高裁は条件、期限付きの特殊な主文となった背景には「将来予測が相当困難で、期間を限定しない開門を命じるだけの事情があるとはいえなかった」と認定。確定判決の強制力を失わせることは「安易に認められるべきではない」としながらも、今回に限っては「確定判決の特殊性、暫定性を十分に踏まえた上で検討されるべき」と、暗に結論の見直しを示唆してみせた。

 その上で、最高裁は自らが6月に確定させた開門差し止め判決などを念頭に「確定判決後も積み重ねられている司法判断の内容も考慮して検討する余地もある」と、わざわざ非開門の方向性を念押しした。

 二審判決は、共同漁業権が免許の期限を迎え、それを根拠にする開門を求める権利も自然消滅していたという形式論だけで国側を勝たせた。しかし、最高裁は漁業者が連続して新たな免許を得ていることから、確定判決が認めた開門の権利は新しい漁業権にも引き継がれるとした。

 「開門せず」の方向性は変えないまでも、その理屈については論点を例示して、審理をやり直すように命じた今回の最高裁判決。差し戻し前と後の福岡高裁の審理で最も違うのは、国に「開門してはならない」という法的義務が確定している点。国はこの点を全面的に主張するとみられ、開門を求める漁業者側にとっては厳しい差し戻し審になる見通しだ。

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