「安定と挑戦」を掲げた第4次安倍再改造内閣が発足した。17閣僚が交代、小泉進次郎氏を環境相に起用して清新さを演出する一方で、麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官、二階俊博党幹事長という政権を支えてきた3本柱をそろって留任させ、横滑りや側近重用も目立った。

 自民党総裁の任期は残り2年、安倍晋三首相は長期政権の総仕上げに入る。だが、今回の布陣は「安定」最優先がにじみ、何を成し遂げようとするための人事なのか、安倍首相の肝心なメッセージが明確に伝わって来ない。

 とりわけ、首相の判断に疑問符を付けざるを得ないのは、麻生財務相の続投だ。森友学園を巡る決裁文書の改ざんという民主主義の基盤を崩しかねない不祥事を起こした財務省の責任者。しかも破格の値引きで国有地を売却した理由も、改ざんの動機も、解明しないまま職にとどめたことは、倫理観の欠如と批判されても仕方あるまい。

 11月には1次政権時代も含む通算在職日数が史上最長となる首相だが、宰相としての風格は希薄だ。それはここまでの政治手法と無縁ではない。異論に耳を傾けず、質問をはぐらかす、論戦から逃げる姿は、言論の府を空洞化させた。

 今夏の参院選など、党総裁として戦った衆参両院選6連勝も、政権運営が高く評価されたというよりも、旧民主党政権の大失態の記憶が払拭(ふっしょく)されていないなど、野党の非力さ故のものだろう。

 参院選があったとはいえ、6月に通常国会が閉幕してから3カ月近く、国会は実質的な審議をしていない。野党が再三要求しても、衆参の予算委員会は4月以降、開かれない状況が続く。

 この間、内政、外交とも、政権が説明責任を果たさなければならない問題が相次いだ。国交正常化以降最悪の事態に陥った韓国との関係をどのようにほぐしていくのか。従来の原則を封印して、ロシアのプーチン大統領と27回も会談を重ねながら、一向に進展が見えない北方領土交渉についても総括が必要だ。

 トランプ米大統領と大枠合意した日米貿易交渉の詳細な中身も定かではない。米中間の熾烈(しれつ)な「貿易戦争」にどう対処するのか、イラン情勢の緊迫化で米国が呼び掛けた有志連合構想への参加問題など、国会で論議しなければいけないテーマは山積する。

 「老後資金2千万円」の審議会報告書をきっかけに膨らんだ国民の将来不安は、参院選後に先送りしていた年金の財政検証の公表でも裏付けられた。アベノミクスの果実の実感が伴わない中で、副作用が懸念され、消費税増税などで経済の不透明感も増す。成長頼みの財政再建路線も揺らぐ。

 首相自身が「国難」と名付けたように、人口減少と少子高齢化が襲い、持続可能な社会保障制度など「縮む社会」への対応は、待ったなしだ。“痛み”が不可避なこうした中長期的な課題に、真正面から向き合い、腰を据えて取り組むべきときではないか。衆院解散風を吹かせて野党をけん制するスタイルから、脱皮を図ってもらいたい。

 国会で堂々と野党と論戦を交わし、国民に真摯(しんし)に語り掛けていく。政策の優先順位を見極め、強行突破するのではなく、幅広い合意形成に努力する度量が、最長首相に欠かせない資質である。(共同通信・橋詰邦弘)

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