浸水被害から営業再開に向けた作業が続いている「井手ちゃんぽん」=武雄市北方町

「店はここまで水が来ていた。水が引くと足の踏み場もない状態だった。みんなの言葉や支えがあって店を再開する気になった」と話す古賀学さん=武雄市北方町の居酒屋NUF NUF

 佐賀県など北部九州を襲った豪雨から11日で2週間。長時間にわたって水が引かず深刻な浸水被害が広がった武雄市北方町では、片付けを終えて営業を始める店が相次ぐ一方、全面的な改装や厨房機器の調達に時間がかかり、再開のめどが見通せない飲食店も多い。そうした店の心の支えになっているのは、常連客らの「やめないで」「再開したら絶対来る」の声。ゴールはまだ見えないが、一歩一歩進んでいる。

 北方町は国道34号沿いに多くの飲食店が並ぶ。「B級グルメストリート」と名づけ、8月はスタンプラリー企画も行っていた。通りは28日未明からの豪雨で1メートル以上冠水。29日朝まで水が引かない店も多かった。

 「厨房機器にテーブルから畳まで全て使えなくなった」。県外にも広く知られる「井手ちゃんぽん」の井手良輔さん(47)は、今も従業員と片付けに追われている。当初は9月20日再開を目指したが「厨房機器だけでも1カ月はかかる。板の張り替えなど内装工事も必要」と10月中の営業再開を目指す。

 豊富なメニューで人気の食堂「かみや」の小路丸貴之さん(48)は「拭いても拭いても乾いたら泥が出てくる。においも取れないから壁紙は貼り替え。業務用冷蔵庫は倒れて使えない。2カ月ぐらいかかるかも」という。かま蔵うどんの高山京さん(59)も「全面的に改装する。11月1日再開を目指したいが、めん打ち機が大丈夫かどうか…」と心配顔。どの店も工事の人手不足や不透明な厨房機器納入の見通しなど、片付けを終えても次々に懸案が出てくる。

 つらい作業を支えているのが常連客や友人だ。いずれの店も「大丈夫かと電話が鳴り、片付けの手伝いに来てくれた」と口をそろえる。わざわざ立ち寄って「店が開いたら必ず来る」と声をかけていく人もいる。

 29日朝、店に入ったという居酒屋「NUF NUF」の古賀学さん(45)。「無理やん。もうできん」とあきらめが心を支配した。そうしていると常連さんが次々にやってきた。足の踏み場もない店を見て「今のうちに出そう」と片付けが始まった。「立ち飲みでもよかけん、早う店ば開けて」「閉めたら許さんよ」。古賀さんは「そがん言われたら裏切られんですよね」とうれしそうに笑う。

 かみやの小路丸初恵さん(69)も「『つぶさんでよ。続けてよ』ってね。何日も何人も片付けに来てくれて」と、しみじみと感じた人のありがたさを胸に、復旧作業を続けている。

 他の店主からも「営業しないと日々借金を重ねているようなもん。従業員の暮らしを支えるためにも、一日も早く店を開けたい」「激甚災害指定で融資の利率が下がると聞いた。改装プランを再検討する」と前向きな言葉も出ている。店の雰囲気も営業再開に向けて少しずつ変わっている。

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