来年度から始まる「大学入学共通テスト」で英語の民間試験が導入されることに、高校現場の不安が広がっている。実施予定は目前なのに、いまだに日程や会場などの全体像が固まらないためだ。仕組みも複雑で分かりにくい。文部科学省は対応を急がねばならない。

 新しい入試制度では実生活で使える英語力を目指し、「読む・聞く」に加えて「話す・書く」の4技能を重視。その目玉として「英検」「GTEC」などの民間検定試験を活用することになった。

 しかし、7月、参加予定だった「TOEIC」が突如、取り下げ、民間に頼る制度設計のもろさが露呈した。運営主体の大学入試センターと実施団体との協定書締結がずれこむ中での撤退だった。

 受験生は残る6団体、7種類の試験から選択し、来年4~12月に2度まで受験できる。必要な情報がはっきりしないまま、手続きだけが先行し、英検は今月18日から3千円で予約の申し込みを受け付けると公表した。

 文科省は、受験生に大きな影響がある入試の変更点は2年前までに予告することを原則としてきた。民間試験が始まるまで半年余りの時点で制度が固まっていないのは異常な状況だ。

 全国高等学校長協会は7月、不安の解消を求める異例の要望を文科省に提出。「次年度のことにもかかわらず、まったく先が見通せないほどの混乱状況」だと訴えた。

 全国の校長の協議会では、「不安を払拭ふっしょくできなければ、体制が整うまでは実施を見送るべきだ」といった声が相当数に上ったという。

 特に問題なのは、受験生が希望する時期や場所で試験を受けられる見通しが依然、立っていない点だ。採点方法など試験の公平・公正さへの不信が拭えないことや、民間試験の活用方法を明らかにしていない大学が多数あることも懸念材料だ。

 6月には、英語が専門の大学教授らが国会内で記者会見し、当面の利用中止を訴えた。「異なる複数の検定試験結果を比較できない」「トラブルや不正に実施団体が適切に対応できるのか」といった懸念を示している。利用見送りを決めた国立大も出て、大学側の対応は分かれる。

 文科省の調査では、対象の四年制国公私立大約750校のうち約3割が利用するかどうかを決めていない。同省は遅くとも9月中に必要な情報を公開するよう通知したものの、あまりにも対応が遅すぎる。各大学の回答をまとめた「大学入試英語ポータルサイト」もとても見づらい。「周知を徹底する」というが、今、どれだけの高校生が制度を理解しているだろう。

 もともと、大学入試を民間に丸投げする制度設計に無理があったのではないか。これだけ現場から根強い反対があるのに、スケジュールを強行する必要があるのか。受験生を壮大な実験にさらしてはならない。実施の延期も視野に入れるべきだ。

 共通1次試験やセンター試験開始の際も、当初は12月実施予定だったが、授業や行事への影響が大きいとの高校側の意見を考慮し、実施が近づいてから1月に変更された。生徒を預かる学校現場の声には配慮が必要だ。

 民間試験を使わなくても大学入学共通テストは始められる。文科省は高校側の不安を払拭できるよう対応を急ぎ、一刻も早く混乱を解消しなければならない。

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