〈きのうの火事が出ているわ/と ママが声に出して新聞を読んだ〉。まど・みちおさんに「火事」と題する詩がある。日本に新聞ができてから何度こんな記事が載ったろう。世界中でなら、もっとたくさん。〈そして一回でも/出たことが あるのだろうか/その火事で死んだネズミたちのことが…/そのネズミについて暮らしていた/ノミの親子のことが…〉◆世界は多様さに満ちている。災厄の時ほど、それを実感させられることはない。「記録的な大雨」「油流出」「被災地」…紙面を埋める言葉の裏側には、さまざまな恐怖の記憶や悲しみ、失意が複雑に入り混じっている◆君はそのことに気づいていたか。武雄市に避難指示が出ていた当時、窓ガラスを割って民家に侵入した疑いで、おととい24歳の男が逮捕された。この事件とは別に、家屋の災害診断をかたった不審電話もあった。ひとでなし、である◆被災地を歩いてみればよかったのだ。全国から駆けつけたボランティア、流出した油の除去や有明海の流木撤去に奔走する関係者、被災者の心身のケアに心を砕く専門家…県内あちこちの被災地に、寄り添おうとする人たちがいることに、きっと気づいただろう◆せめて、ほんの少し人にやさしくなりたい。さもしい邪心こそ、油にまみれて、どこかへ流されてしまえばよかったのだ。(桑)

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