鹿児島県出水市で4歳女児が亡くなり、警察は暴行容疑で母親の交際相手の男を逮捕した。男は殴ったことを認め、しつけだったとの趣旨の供述をしているという。女児は風呂場で溺れたとされ、死因は溺死。しかし暴行によるとみられる傷が頭や体に複数あり、死亡の経緯や日常的な虐待がなかったかなどについて慎重に捜査している。

 女児を巡り、児童相談所や警察、市は虐待を疑わせる情報を把握していた。警察は3月下旬から4月上旬に計4回、夜間に1人で外出した女児を保護。市も8月、母親が受診した病院から、一緒に来た女児の顔などにあざがあるとの連絡を受けた。警察は児相に一時保護の必要性を伝えた。

 しかし児相は調査不足から容疑者の男との同居を把握しておらず、虐待と判断するに足る親子関係はないとして動かなかった。市が連絡を受けたあざの情報は児相や警察と共有されなかった。さらに雨の日に女児が下着1枚で外にいたとの付近住民による目撃情報もあったが、関係機関の対応は連携不足もあって見守りにとどまり、最悪の結果になってしまった。

 東京都目黒区で昨年3月に5歳女児が虐待によって死亡したとされる事件を受けて、政府は児相に虐待通告があったときには子どもの安全確保を最優先するルールを打ち出しているが、そうはならなかった。またも教訓は生かされなかった。

 目黒の事件で保護責任者遺棄致死の罪に問われた母親は3日、東京地裁の裁判員裁判初公判で「間違いありません」と起訴内容を認めた。昨年1月下旬ごろから女児に十分な食事を与えず、傷害罪などで起訴された夫による暴力を知りながら放置。女児が極度に衰弱したのに虐待の発覚を恐れて病院に連れて行かず、死亡させたとされる。

 この事件をきっかけに政府は昨年7月に緊急対策として、児相への虐待通告から48時間以内に面会などで子どもの安全を直接確認できない場合には立ち入り調査をするというルールを徹底するよう求めた。しかし札幌市で今年2月に2歳女児が衰弱死した事件では児相が積極的に動かず、安全の確認を怠っていた。

 出水市の事件で虐待の情報は、母子が鹿児島県薩摩川内市で暮らしていた3月にはあった。児相が母子と面談。警察も自宅を訪問したが、目立った傷はなく、母親は「男性とは一緒に生活していない」と説明していたという。その後、警察は女児が夜間に外で1人でいるところを繰り返し保護し「一時保護の必要性を認める」と文書などで複数回、児相に伝えた。

 児相は一時保護をせず、母親に「次回こういうことがあれば一時保護する」と告げるにとどめた。子どもの安全確保を最優先するというルールが浸透せず、調査不足に連携不足が重なってしまったことがうかがえる。

 子どもに対する親の体罰を禁じ、児相の体制強化を目指す改正児童虐待防止法などが成立、来年4月施行される。また親権者が監護や教育に必要な範囲で子を戒めることを認める民法の「懲戒権」を巡り、法相の諮問機関・法制審議会が見直しの議論を進めている。

 児童虐待が深刻さを増し、児相の人員・人材不足や市町村との役割分担見直しなど課題は多いが、まず子どもの安全を確保することを現場に徹底させる必要があろう。(共同通信・堤秀司)

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