◆佐賀豪雨の主な被害

 佐賀県内を襲った豪雨で、8月28日に大雨特別警報が発表されてから4日で1週間。県内では3人が犠牲になり、1人が意識不明の重体になっている。被害が大きかった市町は浸水被害の調査を継続しており、被害の件数はさらに増える見通しだ。復旧に向けた動きが本格化する中、杵島郡大町町では、佐賀鉄工所大町工場から流出した油の回収作業や、ボタ山わんぱく公園の斜面崩落による避難指示が続いている。県内の主な被害や現状をたどる。

 

 国土地理院が8月28日に上空から撮影した写真と、浸水地点の標高データを基に推計したところ、県内の浸水被害は、小城市を流れる牛津川周辺で最大深さ約3・1メートルに達した。武雄市の六角川の周辺では東西約14キロにわたって浸水が発生し、市内の北方町志久では深さが約2・7メートルに達した。一時孤立した大町町の順天堂病院周辺でも、深さ1~2メートルの浸水があった。小城市の牛津川の周辺は南北約10キロの範囲が浸水した。

 県警などによると、8月27日から降り続いた大雨で28日朝に武雄市武雄町で、道路が冠水して流されたとみられる車の中から西松浦郡有田町の50代男性が救助されたが、搬送先の病院で死亡が確認された。同じ頃に車で流されたとみられる武雄市の50代女性は、4日後の9月1日に大町町大町の六角川で遺体で発見された。佐賀市水ケ江では8月28日、水路に沈んだ車から70代の女性が救助されたが、意識不明の重体になっている。

 武雄市北方町志久の住宅では、浸水した1階部分から90代の女性の遺体が8月29日に見つかった。

 大雨被害は県内の広い地域に及んだため、家屋の被害状況は全容が把握できていない。県の3日現在のまとめでは全壊1件、半壊2件、一部損壊3件、床上浸水794件、床下浸水903件となっている。武雄市や大町町、佐賀市などで調査が続いており、数は膨らむとみられる。

 国道385号の坂本峠入り口など、県内各地で道路沿いののり面の崩壊による土砂流入や、冠水などが生じたため、3日現在で国道1カ所、県道6カ所が全面通行止めになっている。長崎道の武雄ジャンクション付近では大規模な地滑りの影響で路面の隆起が発生している。長崎方面への下り線が通行止めになり、宿泊施設の利用客数に影を落としている。

 大町町ではボタ山わんぱく公園の西側と南側で大規模な崩落が見つかった。専門家が調査したところ、被害が大きい箇所は幅約80メートル、長さ約180メートルに及んでいた。県が3日まで現地調査を実施し、応急復旧に向けた工法などを検討している。崩落箇所のそばは住宅地で、3地区の124世帯251人に避難指示が出ており、多くの住民が避難している。3日現在での避難者数は、武雄市と大町町を合わせて156世帯300人に上っている。

◆佐賀市と白石町 月間総雨量の2倍超 8月26日から29日の96時間

 県内の26日から29日まで96時間の総雨量は、多いところで500ミリを超えた。気象庁の県内の観測地点8カ所のうち、佐賀市と杵島郡白石町では平年の8月の月間総雨量の2倍以上になった。28日の24時間だけで見ても、佐賀市と白石町では平年8月の月間総雨量を上回り、短時間に降り注いだ大量の雨が大きな被害をもたらした。

 佐賀地方気象台によると、28日未明から朝にかけて局地的に猛烈な雨が降り、県南部(神埼市、神埼郡吉野ヶ里町、佐賀市、小城市、武雄市、杵島郡大町町、江北町、白石町付近)では明け方に1時間に約110ミリから120ミリ以上の猛烈な雨を解析し、「記録的短時間大雨情報」が相次いで発表された。28日午前5時50分には県内18市町に大雨特別警報が発表された。

 26日から29日までの総雨量は最も多い唐津市で533ミリに上った。次いで佐賀市484・5ミリ、鳥栖市477・5ミリ、北山(佐賀市)440ミリ、伊万里市419・5ミリ、白石町414ミリ、嬉野市337・5ミリ、川副(佐賀市)320・5ミリだった。

 28日の24時間を見ると、白石町の299・5ミリ、佐賀市の283ミリの2カ所が突出し、平年の8月の月間総雨量(白石町177・5ミリ、佐賀市196・9ミリ)を上回った。一連の大雨の1時間降水量では佐賀市の110ミリを含む2地点、24時間降水量では佐賀市の390ミリを含む2地点などで観測史上1位の値になった。

 被害の大きかった武雄市や大町町には気象庁の観測施設がないが、県が設置する武雄市北方町の雨量計によると、27、28日の48時間の降雨量は482ミリに上った。

◆豪雨発生から1週間の動き

【8月27日】

午前6時24分 大雨警報発表で県が災害情報連絡室設置
午後9時55分 県が災害警戒本部設置
午後10時45分 第1回災害警戒本部会議を開催

【8月28日】

午前4時ごろ 県内全域で1時間に100ミリを超える猛烈な雨を記録
午前5時50分 三養基郡基山町と藤津郡太良町を除く18市町に大雨特別警報を発表(その後、午前8時45分までに基山町、太良町でも発表)
午前8時ごろ 佐賀鉄工所大町工場(杵島郡大町町)から大量の油が流出したのを消防が覚知
午前8時4分 山口知事が陸上自衛隊久留米駐屯地司令に自衛隊派遣要請
午前8時半 県が災害警戒本部を災害対策本部に格上げ
午前8時50分ごろ 武雄市で冠水の影響で流されたとみられる車の中から発見された50代男性が死亡
午前10時 山口知事が災害についての記者会見。県内の避難者が午前10時時点で2919人でピークとなる
午前11時半 第1回災害対策本部会議を開催
午前 大町町の「ボタ山わんぱく公園」で土砂崩れが発生、同町が覚知
午後2時半 県が武雄市に現地対策本部を設置
午後2時55分 県内の大雨特別警報が解除
夜 順天堂病院と併設する老人保健施設で入院者ら200人以上が孤立

【8月29日】

午前3時55分 大町町で国交省などがポンプ車による排水を開始
午前4時35分ごろ 武雄市の浸水した住宅で高齢女性の遺体が発見され、その後の検視で溺死と判明
午前9時15分 山口知事が自衛隊ヘリコプターなどで武雄市や大町町を視察
午前 各市町で大雨被害で発生した「災害ごみ」の受け入れを始めた
午後 自衛隊が順天堂病院と施設に飲料水や食料を運び入れる。有明海や六角川に油膜を確認

【8月30日】

午前 JR唐津線が始発から3日ぶりに全線で運転再開
午前6時50分 浸水が緩和して自衛隊の大型車両が順天堂病院へ物資などを輸送できるようになる。午後には乗用車が通行できるようになり、病院の孤立状態が解消
午前9時10分すぎ 自衛隊が大町町で流出油の回収を開始
午後 自衛隊が大町町の避難所に入浴所を設置

【8月31日】

午前 JR佐世保線、筑肥線が始発から運行を再開
午前 武雄市や大町町でボランティアの受け入れを開始。全国から634人が訪れて復旧が本格化
午前10時ごろ 山本順三防災担当相が佐賀入りして現地を視察。午後からは佐賀県庁で山口知事と会談
午後 サッカーJ1・サガン鳥栖がスタジアムで募金活動を実施

【9月1日】

午後2時50分ごろ 行方不明だった武雄市の50代女性が六角川で発見。司法解剖の結果、死因は溺死の疑いが強く、県内の災害関連死は3人目
午後 ボタ山崩落で土砂災害の専門家が現地を調査

【9月2日】

午前8時半 武雄市で罹災(りさい)証明書の申請開始
午前 順天堂病院の調理室が復旧し、約5日ぶりに病院食を提供
午前 武雄市や小城市、多久市、大町町などで小中学校の授業が再開
午後2時 県が被災者の住居支援に関する説明会を開催
午後 JA佐賀中央会の金原壽秀会長が山口知事に被害対策を要望

【9月3日】

午前2時 自衛隊が武雄市の国道34号などで除染車を用いた消毒活動を実施
午前11時ごろ 自民党災害対策特別委員会が佐賀入り。ごみ集積箇所や油流出箇所などを視察
正午 NEXCO西日本が長崎自動車道の武雄JCTのり面災害に関する技術検討委員会を開催

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