米国が対中追加関税第4弾に踏み切り、中国も報復関税を同時に発動した。米中間の関税合戦はエスカレートする一方で「経済冷戦」は泥沼化してきた。世界経済の減速懸念はさらに強まっている。米中両国と深い経済関係を持つ日本も一層の痛手は避けられない。

 「私は関税が好きだ」「貿易戦争は簡単に勝てる」とトランプ米大統領はかねて豪語してきた。だが、中国は米国との貿易協議で産業補助金など国家の原則的な問題では譲歩しない姿勢を明確にしており、トランプ氏にとって、屈服しない中国は誤算だろう。

 米中両国の貿易を巡る対立はどうしても覇権を争う性格を帯びてしまうので簡単に決着しない。この2カ国の関係を安定させることは困難だから、対立の泥沼化を覚悟する必要がある。

 その上で両国に望みたいのは、世界経済への負の影響をできるだけ回避するために長期的な戦略を練って冷静に臨んでほしいということだ。

 特にトランプ氏は短絡的な手法を慎んでほしい。来年11月の大統領選挙を前にして手柄を挙げたいという本音が見え、大国同士の関係を管理し安定させるという指導力に欠ける。第4弾の発動も7月下旬の米国の利下げで米経済にはしばらくは関税合戦を続ける体力があるという近視眼的な判断があるようだ。

 トランプ氏は昨年7月から合計4弾の追加関税を発動しても中国から譲歩を引き出せていない。ほぼすべての輸入品に追加関税が課されることになるから、今後は中国企業の米国からの締め出しなど、より敵対的な手法をとる懸念がある。中国も同様に応ずるだろう。

 トランプ氏は貿易協議や首脳会談で合意ができたとして追加関税を延期する休戦の方針を発表したが、すぐにそれらをほごにして追加関税に踏み切った。整合性のない対応だ。経済閣僚ら対中穏健派と、中国の台頭を防ぎたい強硬派の双方の助言に左右されているのだろうが、これでは中国側も真剣に交渉しようとは思わないだろう。

 中国には外国企業を不利に扱ったり、知的財産や先端技術を不適切に入手したりするといった問題がある。政府補助金も含めて国際的な基準からすれば、それらは認められない。また南シナ海や東シナ海で拡張主義をとるなど軍事的な活動も座視できない。米国が中心になって中国に態度の変更を迫る必要がある。

 だが、こうした中国の問題は共産党の一党支配に基づく構造的なものばかりだから、米国は長期的な戦略を立てて粘り強く変化を促す必要がある。来年の大統領選挙までという短い時間枠でのお手軽な勝利を求めては「持久戦」の中国に歯が立たない。今のままではトランプ氏は貿易不均衡も是正できず、中国の構造改革も実現できないまま終わるだけだろう。

 中国も不健全な経済運営では持続可能な成長は難しいと覚悟すべきだ。先端技術の窃取はもちろんだが、産業補助金など今後の成長の妨げとなる制度はいずれ撤廃しなければならない。自由な競争がなければ、米国のような本当の意味での大国にはなれないのだ。

 米中対立の激化は打つ手なしの状況だ。だが4弾の追加関税が出そろい、関税合戦からさらに敵対的な関係に移行する懸念が強まる今こそ、冷静さを取り戻す時だ。

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