防衛省は2020年度予算の概算要求を、過去最大となる総額5兆3223億円とすることを決めた。19年度当初予算比で1・2%増となる。

 米軍再編関連経費などは金額を示さない「事項要求」としているため、年末の予算編成に向け、防衛費はさらに膨らみ、第2次安倍政権発足後、8年連続での増加となる見通しだ。

 昨年末に決定した中期防衛力整備計画(中期防)は、19年度から5年間の防衛予算の総額を過去最大の27兆4700億円と設定しており、その拡大路線に沿った概算要求となっている。

 具体的には、宇宙やサイバー、電磁波など目に見えない新たな領域への対処能力の獲得・強化や、最新鋭ステルス戦闘機F35、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」の関連経費など、高額の米国製装備品が並ぶ。

 しかし、厳しい財政事情の中で、防衛費を増やし続ける余裕はあるのか。削るべきところは削減し、必要な分野に集中する「選択と集中」を進めるべきではないか。

 安全保障は防衛力だけでは成り立たない。各国との関係構築という外交努力も加味したものが国の安保政策となる。「専守防衛」という国防の基本原則も踏まえ、国会が行政監視機能を発揮し、本当に必要な組織、装備なのかどうかを厳しく精査するよう求めたい。

 防衛省は昨年策定した防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」で、宇宙やサイバーなどの新領域での対処能力を向上させる方針を打ち出した。

 概算要求では、宇宙分野の能力向上策として航空自衛隊に「宇宙作戦隊」を創設。陸上自衛隊に電磁波を使って敵部隊の活動を妨害する「電子戦部隊」を設置する経費を計上した。

 確かに、米国や中国などが開発競争を繰り広げる宇宙分野などへの対応は必要だろう。だが、日本独自で何を行うのか。米国とどう連携するのかも含めて十分な検討が求められる。

 従来型の装備品の強化も目立つ。イージス・アショアは垂直発射装置の取得など122億円を計上した。

 ただ、防衛省が配備予定地とする秋田、山口両県の理解は得られていない。北朝鮮は短距離弾道ミサイルの発射を繰り返すが、一方で米朝間での非核化に向けた駆け引きも続いている。イージス・アショアは「費用対効果」の観点からも再考すべきだ。

 海上自衛隊の護衛艦「いずも」を事実上空母化する改修費や、そこで運用する米国製戦闘機F35B、6機の取得費846億円も計上した。空母化は専守防衛に反するとの疑念は拭えない。

 自衛隊にとって本当に深刻なのは「ローン支払い」と人員不足ではないか。高額の装備品購入のため、過去の契約に基づいて支払う「歳出化経費」は19年度当初予算比で9・9%増の2兆1615億円に上る。ローンの支払いに追われて予算編成が硬直化し、本当に必要な装備の手当てができていないのではないか。

 人口減少や少子高齢化による隊員不足も深刻だ。陸海空の定員約24万7千人に対して、実際の隊員は9割を少し超える程度しかいない。防衛計画の大綱も隊員の確保を「喫緊の課題」に挙げた。どんなに装備品をそろえても、使う人が足りなければ防衛力の基盤は揺らぐことになろう。(共同通信・川上高志)

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