激しい雨で水に漬かった佐賀鉄工所大町工場=29日午後0時47分、杵島郡大町町福母(ドローンで空撮)

 大雨による冠水被害の大きかった佐賀県杵島郡大町町で、佐賀鉄工所大町工場から流出した油を河川や有明海に広げないため、排水ポンプの稼働を止めていたことが29日、町などへの取材で分かった。排水施設はその後、浸水で故障し使えなくなった。近隣では排水が遅れ、民家などに取り残された住民の救助が難航、住民からは疑問の声も聞かれる。

 大町町によると、油流出を懸念し稼働を止めたのは下潟地区の排水機場で、同町が管理。六角川に毎秒7・5立方メートルを排水する能力があり、27日からの大雨を受けて稼働させていた。

 油流出を受け、28日午前10時50分ごろ武雄河川事務所から「有明海に流れる可能性があり、排水を止めてほしい」という旨の申し入れがあったという。町は管理を委託している地域住民に停止を伝え、その後、施設は浸水し器機が故障、排水できなくなったという。

 国交省や農水省、県、武雄市、大町町などで作る協議会では、各河川の水位が堤防が耐えられる最高値を超えた場合などに、ポンプによる排水の停止を定めている。ただ、県によると、下潟地区は今回運転調整の区域になっていなかった。

 ある住民は「浸水した地域は他よりも低くなっていて水がたまりやすい。住民の命や財産を守るよりポンプを止めることが優先されるのか」と疑問を呈した。

 武雄河川事務所は取材に対し「ポンプを止めてしまうと人命に関わる危険性がある一方で、止めなければ有明海を汚す可能性があった。非常に判断が難しい」と話している。

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