冠水して孤立した順天堂病院(奥)から、自衛隊のボートで移動する職員ら=29日午前10時17分、杵島郡大町町

 一帯が冠水した順天堂病院(佐賀県杵島郡大町町)周辺では、29日朝から住民の救出作業が行われた。近くの佐賀鉄工所大町工場から流出した真っ黒な油が混じった泥水の中、海上自衛隊佐世保警備隊の隊員がボートで救出。住民は恐怖の一夜からようやく解放され、ほっとした表情を浮かべていた。

 「命が助かってよかった」。8歳の男の子と一緒に救出された母親(41)。前夜は2階に身を寄せて一夜を過ごした。濁った水が徐々に水位を上げて迫ってきて「まるで別世界のよう。本当に恐ろしかった」。流出した油が混ざってにおいが鼻をつき、頭が痛くなったという。男児は「トイレにも行けずに我慢するしかなかった」と振り返った。

 下潟地区の福田廣子さん(84)は着の身着のままでボートに乗り、隊員に抱え上げられながら陸地にたどり着いた。「腰の高さまで水が来た。助かりました。本当にありがたい」と手を合わせて涙した。

 大町町では、JR大町駅南側の下潟地区などで深刻な浸水被害が広がっており、油のにおいが立ちこめる中、警察などが住民の救助に当たった。

 県が佐賀鉄工所に問い合わせたところ、工場内には油の入った槽が八つあり、一つに最大1万2千リットル入るが、流出前は約9万リットルが保管されており、そのうち約5万リットルの油が流出したとみられるという。油は家屋などにも付着しており、住民からは避難の長期化や稲作への被害を心配する声が上がっている。

 今回の大雨による住家などの被害は、佐賀県によると小城市で全壊が1棟、杵島郡大町町で床上浸水が38棟。床下浸水は124棟で、大町町で114棟、伊万里市で9棟、神埼市で1棟。冠水範囲が広い武雄市は現在も全体の状況が把握できておらず、被害はさらに膨らむ見通し。

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