屋根をたたく激しい雨音と雷鳴で目が覚めた。雨脚はどんどん強くなる。夜はまだ明けそうにない。「やまない雨はないのだから」と何度も念じて、強くまぶたを閉じた。きのうの未明、同じような心細い思いで朝を迎えた方もおられるだろう◆「集中豪雨」は日本特有の気象用語で、米国では積乱雲から降る異常な大雨を「雲の爆発」(cloud burst)というのだそうだ。まさに爆発のように県内を襲った記録的豪雨は、明け方の満潮時刻とも重なって、各地に浸水、冠水被害をもたらした。車で立ち往生し、命を落とす痛ましいケースも起きている。「無情の雨」というほかない◆佐賀にもゆかりのある作家山口瞳さんは、豪雨で自宅が浸水した体験をエッセーに書いている。よそで起こる洪水を〈被害者には気の毒であるが、こんなところに家を建てるのはどうかと思うなと考えることがあった〉。しかし自分が被災して初めて、危険が身近にあったことを思い知る…◆災害科学に、有名なハインリッヒの法則というのがある。「一つの大きな災害事故のかげには、同じ原因による29の小さい事故、犠牲もなくすんだ300の事故の卵がある」。かつて経験のない豪雨の中にも、危険の「卵」がいくつも転がっていたことを肝に銘じたい◆あすごろまで雨は続く。まだ気は抜けない。(桑)

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