大雨でくるぶしの高さまで冠水したJR佐賀駅構内=28日午前8時半、佐賀市

 予想もつかない甚大な災害だった。九州北部を襲った猛烈な雨で28日、県内に大雨特別警報が出され、いたるところで家屋の浸水や土砂崩れ、道路冠水が相次いだ。近年、九州北部地域はたびたび豪雨に見舞われてきたが、今回は佐賀市で1時間雨量が観測史上最大の110ミリを記録するなど、市街地での浸水被害が目立ち、都市機能のもろさを改めて浮き彫りにした。経験したことのない豪雨災害に向き合うには、住民自身の防災意識を抜本的に問い直す必要がありそうだ。

 今回の大雨は、停滞した秋雨前線に東シナ海から暖かく湿った空気が流れ込み、地形的要因も加わって積乱雲が次々に発生する「線状降水帯」が原因とされる。24時間の積算雨量は佐賀市で390ミリ、白石町で371ミリ、鳥栖市で343ミリといずれも観測史上最大で、8月ひと月の平年降水量の2倍にも達した。大量の雨が降ったのが有明海の朝の満潮時刻に重なったことが、県内の平野部で広範な浸水被害を招く結果となった。

 低平地の佐賀平野は河川の位置が高く、有明海の満潮時には海面が陸上よりも高くなり、水はけの悪さが宿命的な悩みである。これまで行政による河川の氾濫対策に力が注がれてきたが、近年は市街地化が進んで舗装面積が広がり、集中豪雨で一気に冠水する「都市型水害」の様相も呈している。公共交通の拠点であるJR佐賀駅が浸水によって一時機能まひに陥ったことは、都市基盤のあり方を考える上で深刻な問題と言わざるを得ない。

 こうした地域に暮らす私たち自身の防災意識はどうか。国は昨年7月の西日本豪雨を教訓に、災害リスクを分かりやすく伝達する5段階の「大雨・洪水警戒レベル」をこの夏から導入。今回の大雨では「すでに災害が発生し、命を守る最善の行動」を求められる最も重大な「警戒レベル5」が出された。自治体によっては浸水した避難所もあり、住民には戸惑いもあったろう。冠水した道路を車で進んだり、ほとんど普段着で歩くなど、その危険性が十分意識されていたとは言いがたいケースも目立った。過去の豪雨災害をどこか「よそごと」ととらえる甘さがなかっただろうか。

 雨はいったん小康状態になったとはいえ、なお土砂災害の危険など予断を許さない状況が続く。武雄市をはじめ、浸水被害が深刻な地域では、自衛隊や消防による救助活動で孤立状態の解消も進んでいる。避難所に身を寄せた被災者は心細い夜を過ごしたことだろう。今後さらに被害状況が明らかになっていけば、新たな課題も見えてくるはずだ。まずはライフラインの復旧を含め、一刻も早い「日常」の回復を祈りたい。(論説委員長・桑原 昇)

このエントリーをはてなブックマークに追加