ふらりと故郷に帰ってきては騒動を起こし、いつの間にか旅に出る。フーテンの寅さんが主人公の映画「男はつらいよ」。シリーズ第1作の公開から、きのう27日で50年になる◆作品は1997年まで49作を重ねた。草団子屋「とらや」での妹さくら、叔父夫婦、タコ社長、そしてマドンナを巻き込んだ定番のストーリー。42作目の「ぼくの伯父さん」(1989年)では佐賀市の嘉瀬川河川敷、吉野ケ里遺跡、小城高校などのロケが話題になった◆毎回、お決まりではあっても、寅さんと周囲の人たちの気遣いに心が和んだ。寅さんを演じた渥美清さんは、〈たまの正月や盆に映画を見る。その人たちに勇気と希望を与えるのが映画の大事な役目じゃないかい〉と語っていたという(寺沢秀明『渥美清の死生観』)◆だが半世紀がたち、人とのつながりが希薄な時代にあって、現代の寅さんをどう描くかはなかなか難しそうだ。周囲への寛容さを失い、何事にも答えを急ぐ社会。寅さんは一人ぽつんと取り残された存在になりかねない◆〈赤とんぼじっとしたまま明日どうする〉。渥美さんは永六輔さんに誘われ俳句に取り組んだ。漂泊の自由律俳人尾崎放哉ほうさいや種田山頭火たねださんとうかに通じる句を残している。俳号は「風天」。せっかちで窮屈な世の中で、自由気ままな生き方にますますあこがれてしまう。(丸)

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