絵と佐賀錦を組み合わせた作品を制作する上田久世さん=佐賀市の福祉作業所「きずな」

「サロン・ドトーヌ」展で入選した「蝶奏曲」。中央部の金色の光沢がある箇所などに佐賀錦を取り入れている

 フランスの2大公募展のひとつで、近代画の巨匠マティスやルオーが立ち上げた「サロン・ドトーヌ」展で、佐賀市の上田久世さん(26)が初入選を果たした。伝統工芸「佐賀錦」をアクリル画に取り入れた独創的な表現が、高く評価された。フランスで来年2月に開かれる別のサロン展への推薦出品も決まり、新作3点を描き上げた。

 入選作「蝶奏曲(ちょうそうきょく)」は華やかなチョウがモチーフ。自ら織り上げた佐賀錦を細かく切り、チョウの羽根などに使用した。昨年、出品した「サロン・ドトーヌ」で初入選を果たし、上田さんは「入選すると思っていなかったのでびっくり。でも自信が付いた」と振り返る。

 上田さんは中度発達遅滞症で、佐賀市の福祉作業所「きずな」で週3日働きながら、創作活動を続けている。

 幼い頃から絵を描くのが好きで、中学1年だった2006年、佐賀県内で開かれた「全国豊かな海づくり大会」絵画コンクールで知事賞を受賞した。ファンタジックな世界観や豊かな色彩感覚が持ち味で、障害のある子ども向けの全国コンクールでも3年連続優秀賞など実績を残してきた。

 15年からは海外の公募展にも意欲的に出品。母の博美さんとともに、より独創性の高い作品制作を模索する中で注目したのが、伝統工芸の佐賀錦だった。

 花や昆虫など、大好きな自然がモチーフの絵に、華やかな光沢の佐賀錦を組み合わせたら-。新しい世界を生み出したい、と教室に通って織りの技術を学んだ。

 ルノワールやセザンヌ、ピカソ、藤田嗣治ら名だたる画家が活躍した「サロン・ドトーヌ」入選で一気に注目を浴び、日本国内の美術専門誌も作品を取り上げた。来年2月の「パリ国際サロン」展出品も決まり、約半年かけて新作3点を制作した。

 「描くのも織るのも全部好き」。洋画の世界に佐賀錦の伝統を持ち込み、新たな美を生み出す大胆な試み。上田さんは「いつか自分の好きなデザインの佐賀錦を織れるようになって、今よりも大きなサイズの作品を描けたら」とさらなる意欲を見せる。

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